経済的な損失を回避できる

法定雇用率制度と裏腹の関係ですが、法定雇用率未達成の事業者には、雇用不足数1名あたり月5万円(年間60万円)の納付金を納付する義務が課せられています。納付金を納付したからといって、雇用率未達成に伴う行政措置(雇入計画策再命令、事業者名公表)が免除されるものでもなく、単純に資金が外部に流出しているわけです。大規模な病院で障害者を意識的に雇用してこなかったところでは、年間1,000万円を超える納付金を払うことにもなります。

納付義務は、これまで常時雇用する職員が200人を超える事業者(法人単位)に限られていたのが、平成27年4月から100人を超える事業者にまで対象が拡大されました。このため、新たに納付金を納付しなければならない医療機関も増えています。

障害者を雇用するのには人件費等のコストが伴いますが、上記のように納付金が削減されることに加え、ハード面の環境整備や支援者の配置等に対する助成制度もあります。これらの支援措置は医療機関ではあまり利用されていませんが、上手に活用すれば負担は更に軽減できます。

なお、障害者雇用で切り出される業務は、一般的には診療報酬で評価されず(つまり収入面では貢献しない)、業務全体の効率化が進むことを通じて経営に貢献すると考えられています。例外的に、障害のある職員(非常勤を含む)を病棟に配置して看護師の負担を軽減する業務に従事させる場合は、看護補助者として「急性期看護補助体制加算」や「看護補助加算」の必要人数にカウントできることがあります。この場合は、障害者雇用を進めることが診療報酬の加算の取得や維持にも貢献することになります。