2006(平成18)年12月に国連で採択された障害者権利条約は、障害者の権利及び尊厳を保護・促進するための包括的・総合的な国際条約であり、我が国は2007(平成19)年に署名しました。同条約の批准に向けた法整備の一環として、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」が制定されるとともに、労働・雇用分野については「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正が行われました(2013(平成25)年6月成立)。こうした法整備を経て、我が国は2014(平成26)年1月20日に障害者権利条約を批准し、同年2月19日から同条約は我が国に効力を発生しました。
「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」では、雇用分野以外の全般について「差別的取り扱いの禁止」は法的義務とされていましたが、「合理的配慮の不提供の禁止」は民間事業主には努力義務を課すにとどめていました。2021年(令和3年)5月の法改正で民間事業主にも法的義務が課せられることになり、令和6年4月1日)から施行されました。
医療機関向けには「医療分野における事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する対応指針」(令和6年3 月厚生労働大臣決定)が策定されており、障害種別ごとに主な対応が示されています。
(参考)「障害者差別解消法 医療関係事業者向けガイドライン〜医療分野における事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する対応指針〜」
一方、雇用分野については、「障害を理由とする差別的取扱いの禁止」と「合理的配慮の提供義務」がいずれも事業主への法的義務として課せられています。
労働・雇用分野での具体的な措置については、「(5)雇用主の法的義務としての「合理的配慮」が提供できる」に記載しているので、そちらをご覧ください。
障害者雇用を進める中で、事業主として「合理的な配慮」に関する経験が重なるほど、障害に対する理解も深まることから、障害者雇用を進めることは、単に雇用者としての立場だけでなく、医療機関を利用する障害のある患者、家族、見舞客などに対するサービス提供者としての立場としても、サービスの質の向上につながることが期待できます。
(参考)「医療機関に関する良かったこと調査」報告書