公務部門における障害者雇用の問題について

本年8月以降、中央省庁や地方公共団体における障害者雇用率の算定が不適切だったことが発覚し、マスコミや国会でも大きく取り上げられています。再点検の結果では、国の機関では3,814.5人、地方公共団体では4、667.5人、独立行政法人等では335.5人の不足数があることが判明しました。

(資料1-1)「平成30年8月28日に公表した「国の行政機関における平成29年6月1日現在の障害者の任免状況の再点検結果について」及び同年9月7日に公表した「立法機関及び司法機関における平成29年6月1日現在の障害者の任免状況の再点検結果について」の訂正について」(平成30年10月22日)

(資料1-2)「都道府県の機関、市町村の機関、都道府県等の教育委員会及び独立行政法人等における平成29年6月1日現在の障害者の任免状況等の再点検結果について」(平成30年10月22日)

今回の公務部門における障害者雇用問題については、「公務部門における障害者雇用に関する関係閣僚会議」が設置され、10月23日には「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」が決定されました。

(資料2-1)「公務部門における障害者雇用に関する基本方針」(平成30年10月23日)

(資料2-2) 「公務部門における障害者雇用に関する基本方針(概要)

基本方針では、今般の事態の検証とチェック機能の強化について示したうえで、法定雇用率の速やかな達成に向けた計画的な取組、国・地方公共団体における障害者の活躍の場の拡大、公務員の任用面での対応の方針を掲げ、閣僚会議等で取組状況をフォローアップしていくこととしています。

障害者の認定という法定雇用率制度の根底に関わる部分で、公務部門において今回のような問題があったことは、大変残念なことです。

公務部門における障害者雇用の問題について、これまでの議論を若干振り返ってみたいと思います。障害者雇用率の達成に苦労されている民間企業が多い中、率先垂範すべき立場にある公務部門には、民間企業より0.3%高い法定雇用率が設定されています。このように民間企業よりも高い目標を設定されているにも関わらず、ほとんどの国の機関や地方公共団体でこれを達成できていたのは、在職中に身体障害者となった中途障害者が雇用継続される割合が民間企業に比べて高いためと考えられていました。そうは言っても、今後とも確実に雇用率を達成していくためには、民間企業で知的障害者の雇用が進んできたのと同様に、身体障害者のみではなく、知的障害者や精神障害者も視野に入れた採用を考える必要がありました。この考え方の下に、平成16年度には政府の障害者施策推進本部の下の関係府省課長会議に「公務部門における障害者雇用推進チーム」が設置され、「公務部門における障害者雇用ガイドブック」(平成17年3月)が策定されました。

その後、障害者雇用を促進するための諸制度は拡充が続き、障害者雇用を支援する機関の種類や数も格段に増えました。精神障害者や発達障害者も雇用率制度に取り込まれ、障害特性に即した支援ノウハウも蓄積されてきました。こうした制度・支援機関・ノウハウを最大限に活用することで、働く障害者と雇用する職場の双方にとって意義のある障害者雇用を実現することは、十分現実的なものとなっています。この環境を最大限に生かした先駆的な取組みを行うことこそ、今後の公務部門の障害者雇用に期待したいところです。