毎年6月1日時点の民間事業所及び公務部門の障害者雇用の状況については、「障害者雇用状況集計結果」として取りまとめられており、令和2年の集計結果は令和3年1月15日に厚生労働省から発表されました。
6月1日時点での在職者の調査は、事業所ごとの実雇用率を把握するために行われることから、障害者の在職者数は重度障害者をダブルカウントしていますが、ここではダブルカウントする前の「実人数」で見てみます。
上段は令和元年、下段は令和2年の在籍者数で、( )は在職障害者に占める割合を示しています。
国の機関
身体障害者 知的障害者 精神障害者 計
3,511人(53.3) 241人(3.9) 2,485人(39.8) 6,237人
4,159人(56.3) 255人(3.3) 3,393人(43.5) 7,807人
都道府県の機関
身体障害者 知的障害者 精神障害者 計
5,880人(85.9) 214人(3.1) 753人(11.0) 6,847人
6,063人(81.2) 257人(3.4) 1,145人(15.3) 7,465人
都道府県教育委員会
身体障害者 知的障害者 精神障害者 計
7,093人(81.1) 388人(4.4) 1,265人(14.5) 8,746人
7,486人(78.7) 539人(5.7) 1,943人(20.4) 9,510人
市町村の機関
身体障害者 知的障害者 精神障害者 計
18,315人(83.3) 974人(4.4) 2,692人(12.2) 21,981人
19,110人(79.5) 1,146人(4.8) 3,780人(15.7) 24,036人
市町村教育委員会
身体障害者 知的障害者 精神障害者 計
1,074人(80.4) 97人(7.3) 165人(12.4) 1,336人
1,064人(74.8) 107人(7.5) 251人(17.7) 1,422人
このデータから分かることをまとめてみましょう。
(1)いずれの機関でも身体障害者の割合が減少し、精神障害者の割合が増加しています。法定雇用率を満たすために新たに障害者が雇用される際に、精神障害者が多く雇用されたことが影響していると思われます。
(2)都道府県・市町村の機関や教育委員会では身体障害者の割合が8割程度なのに対し、国の機関では身体障害者の割合が5割程度で精神障害者の割合が4割程度と高くなっています。
(3)いずれの機関でも知的障害者の割合が1割未満となっており、特に国の機関と都道府県の機関では3%程度と低くなっています。労務系の仕事がある市町村の機関や教育委員会とは異なり、労務系の仕事が少ないこともあり、知的障害者の雇用が念頭に置かれてこなかったことも影響していると思われます。
(4)都道府県・市町村の機関及び教育委員会では知的障害者の在職者数も雇用割合も増加しているのに対し、国の機関では知的障害者の在職者数は微増ですが、割合は減少しています。国の機関では知的障害者の職域が開発されておらず、また、採用に当たり職場実習が行われることもほとんどなかったことから、知的障害者の雇用に対して消極的な傾向があります。このことは、知的障害者の職域開発、職場実習、雇用管理のノウハウの普及によって、国の機関の障害者雇用に伸び代があることを示しています。