お話33 「戻れる居場所の存在が安定雇用につながる」

関西にある大学病院(奈良県立医科大学附属病院)では、多数の知的障害者や精神障害者が病棟など院内の様々な職場で戦力として活躍しています。この病院では、特別支援学校の実習生などを受け入れた際、まずタオル折りの仕事を体験してもらっています。採用の基準には、タオルを折り続けることができるかどうかがあり、入職後もタオル折りの仕事が確実にできるようになってから、それぞれの適性を踏まえて職場に送り出しています。

患者さんの身体を拭くタオルは、各病棟などで毎日大量に使用されるため、タオル折りの仕事は安定的な業務となっています。タオル折りは、決められた方法で繰り返し行う定形的な業務なので、作業の速さには個人差があるものの、慣れれば誰でも戦力になることができます。

全員にタオル折りの仕事を経験してもらうのは、配属後の担当業務や職場で不調が生じた際に、いつでも戻れる場所を確保しておく意味があります。自分が戦力になれるタオル折りの仕事で調子を回復すれば、再び以前の職場に戻ったり、新たな職場に移ることができます。このように「戻れる場所」を院内に用意していることで、長期にわたり働き続けることが可能になっているのでしょう。