僕が行かないと病院が困る

新型コロナ感染症が拡大し、緊急事態宣言が発令された当初は、ウイルス検査を受ける人や発熱患者が受診する医療機関は、感染リスクの高い場所として敬遠される傾向にあり、一時は外来患者も大幅に減少しました。そうした状況においては、医療機関で働く障害のあるスタッフや家族の中にも、不安が広がることが懸念されました。医療機関では感染対策が徹底されているため、実際には他の職場で働く以上に安全と言えますが、感染への不安から出勤できなくなったスタッフもいたようです。

一方で、コロナ患者を多く受け入れている地域の基幹病院では、障害のあるスタッフは誰も休まず、勤務を続けていたそうです。家族から「休んだ方が良いのでは」と言われた知的障害のあるスタッフは、家族に対して「僕が行かないと病院が困るから行くんだ」と答えたそうです。

自分が「頼りにされている存在」であることを実感できることは、仕事への責任感やモチベーションにも大きく影響しますが、そのことは障害の有無に関わらないものでしょう。障害のあるスタッフが「頼りにされている存在」と感じられるかどうかは、障害の特性と仕事とのマッチングが的確かどうかによる部分が大きいでしょう。その意味でも、採用段階での職場実習はとても重要と言えます。