「障害の社会モデル」を体感により理解できる「バリアフルレストラン」の体験

「障害の社会モデル」は、「障害」は、社会(モノ、環境、人的環境等)と心身機能の障害があいまってつくりだされるものと理解し、個人の側に特別な努力を求めるのではなく、ハード・ソフトの環境を整えることにより、個人の能力を十分発揮できるようにすることを目指す考え方です。

「障害の社会モデル」の考え方は、2006 年 に国連総会において採択された「障害者の権利に関する条約」で示され、日本も 2014 年にこの条約を批准しています。2016 年 4 月から施行された「障害者差別解消法」や改正後の「障害者雇用促進法」でも、この考え方に基づき、国・ 地方公共団体・事業者に対して、不当な差別的扱いの禁止や合理的配慮の提供を求めています。

「障害の社会モデル」について理解するのには、知識として学ぶだけでなく「少数派」の体験をすることが効果的だと思われます。少数派の体験をすることで、多数派の発想で作られている製品・サービス・制度といった「環境」の側の問題が見えてくるからです。

こうしたことを目指す取組の一つとして、公益財団法人日本ケアフィット共育機構では「バリアフルレストラン」の体験プログラムを実施していますが、2023年3月24日〜25日の2日間、川崎市主催のイベントが川崎アゼリアで開催される機会に体験してきました。

川崎市ホームページでの紹介記事

「バリアフルレストラン」は、車いすユーザーが多数派となる架空社会にあるレストランに「二足歩行者」という障害を有する者が客として来店することで感じる違和感から、「障害」とは何かについて考えるきっかけが得られるものです。1組6人による30分の体験プログラムですが、レストラン内は車いすユーザーに最適化されており、天井は低く、椅子も置かれていない中で、「二足歩行者=障害者」が頭をぶつけたり腰を痛めたりしないように、行政の補助で僅かな数のヘルメットや椅子が用意されています。

「二足歩行者も使えるように最初から天井を高くすれば良いのに」と感じさせる中で、「多数派」という同じ価値観の人たちだけで決めた仕組みに少数派を適応させるような配慮ではなく、多様な人の参加で誰もが取り残されない仕組みを最初から作ることの大切さの理解に誘うプログラムでした。車いすユーザーの皆さんの演技も真実味があり、日頃感じていることを伝えてくれようとする細部の表現は、とても心に響く内容でした。

「バリアフルレストラン」の開催は、現在は自治体のイベントなどでの不定期の開催ですが、こうした体感の機会が増えれば、共生社会に向けた取組も進むと思います。

川崎市の「かわさきパラムーブメント」のホームページでは、「バリアフルレストラン」のイメージの動画を公開していますので、ご覧いただければと思います。川崎市のような取り組みが、他の自治体にも広まっていくことを期待しています。

「ようこそ、バリアCAFEへ〜二足歩行者ウォーカーの体験」