東京都知的障害特別支援学校就業促進研究協議会(会長:髙橋馨 東京都立青鳥特別支援学校校長)では、都立知的障害特別支援学校高等部の卒業生を雇用する事業所を対象にしたwebアンケート調査を、令和6年1月~3月に実施しました。障害者雇用の環境向上や進路指導の充実を目的に行われた調査は、平成19年以来17年ぶりのもので、313社から回答がありました。アンケートに協力した事業所に対して速報値が報告されたので、協議会のご理解を得て概要を紹介させていただきます。
まず、「知的障害者が取り組んでいる業務内容」を見ると、「病院や介護施設等での補助作業」の件数は19位でしたが、「今後も残ると思われる知的障害者の業務内容」では9位となっています。DX化により消滅していく業務も予想される中で、「病院や介護施設等での補助作業」は今後も知的障害者に適した業務として職域拡大が考えられているようです。
次に、採用や卒業後の学校の関わりを見ると、大半の事業所が採用を検討する上で「現場実習」の有効性を認めており、安心して採用できる条件として9割近い事業所が「卒業後のアフターフォロー」をあげています。
業務に関する配慮としては、「複雑ではない業務の提供」「定期面談の実施」「指示を与える社員を決めている」「休憩時間に配慮」「生活支援機関との連携」「本人に分かりやすいマニュアル等の整備」が多くあがりました。
採用の際に重視する点としては、「分からないことを質問できる」「時間を守れる」「挨拶ができる」「指示したことを理解できる」「必要なことを報告できる」「一定時間業務に従事できる集中力」といった点があがりました。雇用継続に必要なこととして、8割前後の事業所が「就業意欲の継続」「安定した生活習慣」「報告や相談ができる」をあげています。知的障害や発達障害のある職員向けの研修では、「ビジネスマナー研修」や「会社全体を理解するための研修」が「業務スキルアップ研修」以上に多く行われています。
これらは業種に関わらず、広く知的障害者の雇用に共通するノウハウと言えるもので、医療機関で知的障害者の雇用を進める上でも大いに参考となりそうです。
最後に障害者雇用のメリットについて聞いた質問では、「企業の社会貢献」が8割と最も多かったものの、「障害のある社員が戦力になっている」という回答も7割以上の事業者からあり、人材不足の時代に知的障害者が職場の戦力となって活躍している姿が浮かび上がりました。
協議会では、今後、働く卒業生からのアンケートも含めて分析を進め、報告書にまとめる予定で、その活用が期待されます。