独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)が実施している、日本看護協会の認定看護管理者教育課程サードレベルの研修が開講され、JCHO病院15病院のほか国立病院、労災病院、大学病院、県立・市立病院、民間病院12病院から計27名が受講しました。本年の研修も、昨年に引き続きオンラインと対面の組み合わせで実施され、「組織デザインと組織経営」の単元では「働き方改革に資する障害者雇用」をテーマに3時間の講義が令和6年8月27日にオンラインで行われました。
本講義では、看護管理者として、人を生かすことで組織のパフォーマンスを高める視点を学ぶことを目的とし、前半の講義では「健康経営」と「多様性」という切り口で、広く職員全体の状況に目を向ける視点に焦点を当てました。健康経営に関しては、自らの職場の健康経営に看護職がどう係るか、ストレスチェックの集団分析をどう活用するかなど、看護管理者として認識しておくべき点を説明しました。「多様性」については、様々な課題を抱えた人材が共に働く職場において、個人の側に特別な努力を求めたり、できないことを理由に切り捨てるのではなく、職場の環境を変えることで個人の能力を十分発揮させ、戦力にしていくことの大切さを伝えました。
後半のグループワークでは「『働き方改革に資する障害者雇用』を看護部門で進めるとしたらどのような業務を切り出せば、看護職が助かるか」と「自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある看護職の適性に合う仕事は何か」の2つのテーマについて、4つのグルーで意見交換しました。テーマ1では、看護補助者の業務も多忙なので、看護補助者の業務から定型的な業務を切り出せば、看護補助者が看護職の業務を分担しやすくなるといった意見がありました。テーマ2では、発達障害の診断の有無に関わらず対応に悩まれた経験は、受講者の皆さんも多かれ少なかれあるようでした。夜勤が伴う病棟勤務が難しく、配置先に苦労されている中で、比較的定着している職場として、手術室、内視鏡室、透析室の事例が報告されました。業務は定型的でも専門性が求められ、専門性を高めることでモチベーションが保てることに加え、単独で働くのではなく周囲の職員の目配りもしやすい点で、これらの職場には共通点があります。自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある看護職にとって、働きやすい環境のヒントが見出せるようです。このほか、記憶力が優れている人を記憶力が活かせる職場に配置したところ、看護師や医師からも頼りにされて頑張っているという事例や、健康管理センターの採血業務に従事している事例も紹介されました。
法定雇用率の引上げや除外率の引下げで、医療機関の障害者雇用への圧力は今後も強まりますが、法令遵守だから仕方なくという受け身の姿勢ではなく、看護職の職場環境を改善する「働き方改革」に障害者雇用を活用するという積極的な視点を、それぞれの病院に持ち帰っていただくことを受講者の皆さんに期待しています。