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国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成セミナーの東京での令和6年度第2回目が、1月20日から4日間の予定でオンラインで開催されました。セミナーには、国の8機関から17名が参加されました。

研修の志望動機を伺うと、すでに障害のある職員の支援担当をされている中で実践的なスキルを身につけたいという方や、今後、障害者の就労支援に当たることが予想されるため必要な知識・対応方法などを習得したいという方など、様々です。また、多くの職員を研修に送り出している機関がある一方で、ほとんど研修に参加していない機関もあるなど、国の機関の取り組みにも差があるのは気になります。4日間という豊富な内容の研修であり、今年度からはオンラインで受講できるように利便性も向上したので、できるだけ多くの職員が参加されるよう、国機関にも配慮いただければと思います。

(講演資料)

「公的部門における職場適応支援者の役割①~働き方改革に資する障害者雇用の進め方~」「公的部門における職場適応支援者の役割②~公務部門での障害者雇用事例に学ぶ~」

東京都福祉局が特定非営利活動法人WEL’Sに委託している就労支援機関連携スキル向上事業の「マッチングスキル等向上研修【実践コース】」の演習に、1月7日と14日の2日間、企業トレーナーとして参加しました。

この研修では、発達障害のある者が採用面接を受けるのに際し、就労支援機関が利用者と企業からアセスメントを行い、企業にどのように説明するかをロールプレイで試します。演習は5人ほどのグループに分かれ、それぞれに福祉トレーナーと企業トレーナーが配置され、福祉トレーナーは自己理解の乏しい発達障害のある利用者役、企業トレーナーは障害者雇用経験の少ない企業の人事担当者役を演じます。

演習後の講評では、できないことを補う配慮(例えば、障害特性のためPC入力や封入のダブルチェックが必要なこと)を企業に求めるのではなく、強みを発揮できる業務を企業見学や企業担当者との会話の中から見出し、それを実習で確認してもらうよう提案することが、企業側に受け入れやすいことを指摘しました。

一方で、実習前にできると言われたことが実習でできないと、正直に問題を伝えてくれなかったと信頼感を損なう結果にもなりますが、実習前に「訓練ではできているが、指導体制や環境が異なる現実の職場でもできるか実習で確認してもらいたい」と説明されていれば、仮にできない場合でも納得感が得やすいことを伝えました。

さらに、企業が想定している業務以外にも、能力を発揮しやすい業務を実習業務に追加しておくと、想定業務ができなかった場合にも受け入れ可能な業務が見出せる可能性があることを指摘しました。障害者雇用の人材確保が難しい中、企業側で想定した業務ではなくても、適性がマッチする業務を実習で確認できれば、採用につながる可能性が高いからです。

求人内容と結果的に異なる業務であっても、障害特性とマッチする業務を切り出して提案する力(求人内容を作り変える力)を支援機関の担当者に身につけてもらうことが、企業トレーナーとして参加する意味だと改めて感じました。

政府は2024年12月27日に令和7年度予算案を閣議決定しました。同予算案に盛り込まれた障害者雇用関係の事項は前年度予算とほぼ同内容となっています。

(資料)令和7年度予算案における障害者雇用関係の概要

 

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が2024年11月13日〜14日に開催した第32回職業リハビリテーション研究・実践発表会において、当ネットワークでも度々紹介してきた奈良県立医科大学附属病院の障害者雇用の取組が発表されました。当日の特別講演等の発表動画が障害者職業総合センター(NIVR)のホームページで公開されましたので、ご案内します。

(掲載先URL)
https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/32kaisai.html

 

 

 

障害者欠格条項をなくす会、視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)、聴覚障害をもつ医療従事者の会、DPI日本会議の共催で11月27日に開催された、オンラインセミナー「障害者の免許全件交付を受けて」の当日の録画が公開された旨のお知らせをいただきましたので、ご案内します。このセミナーには、視覚障害のある精神科医の守田稔さん、聴覚障害のある医学部5年生の荒巻修治さん、発達障害のある看護師のまめこさん等が出演されています。

YouTubeで公開された動画は、手話通訳と字幕付きで、以下から視聴できます。

■各プログラムの開始時間

  • 00:00 開始、大熊由紀子さんの冒頭あいさつおよび瀬戸山陽子さんの趣旨説明について
  • 00:15 スペシャルゲスト挨拶・田門浩さん(次期国連障害者権利委員会委員 弁護士 ろう者)
  • 05:10 導入説明 臼井久実子(障害者欠格条項をなくす会事務局長)
  • 17:00 体験談 医師 守田稔さん(視覚障害をもつ医療従事者の会(ゆいまーる)代表かわたペインクリニック勤務)
  • 34:52 体験談 医学生 荒巻修治さん ビデオメッセージ(秋田大学医学部5年 聴覚障害者)
  • 47:05 体験談 看護師 まめこさん(発達障害をもちながら働く看護師)
  • 1:03:19 体験談 社会福祉士 木村由美さん (社会福祉士 肢体・視覚・言語・てんかんの重複障害者)原稿代読:東奈央さん(弁護士)
  • 1:15:18 メッセージ・障害者欠格条項をなくす会共同代表 福島智さん
  • 1:20:07 書籍『障害のある人の欠格条項ってなんだろう?Q&A』紹介、寄贈及び応募の受付について 瀬山紀子さん(埼玉大学教員、障害者欠格条項をなくす会事務局)
  • 1:58:58 閉会の挨拶(障害者欠格条項をなくす会共同代表 大熊由紀子)

 

厚生労働省は、令和6年12月20日に民間企業や公的機関などにおける、令和6年 障害者雇用状況集計結果」を取りまとめ、公表しました。障害者雇用促進法では、事業主に対し、常時雇用する従業員の一定割合(法定雇用率)以上の障害者を雇うことを義務付けています。今回の集計結果は、同法に基づき、令和6年6月1日現在の身体障害者、知的障害者、精神障害者の雇用状況について、障害者の雇用義務のある事業主などに報告を求め、それを集計したものです。

【公的機関】法定雇用率2.8%、都道府県などの教育委員会は2.7%

○雇用障害者数、実雇用率ともに対前年で上回る。※( )は前年の値
・  国  :雇用障害者数 1万 428.0 人(9,940.0人)、実雇用率 3.07%(2.92%)
・都 道 府 県:雇用障害者数 1万 1,030.5 人(1万627.5人)、実雇用率 3.05%(2.96%)
・市 町   村:雇用障害者数 3万 7,433.5人(3万5,611.5人)、実雇用率2.75%(2.63%)
・教育委員会:雇用障害者数 1万 7,719.0 人(1万6,999.0人)、実雇用率2.43%(2.34%)

【独立行政法人など】法定雇用率2.8%

○雇用障害者数、実雇用率ともに対前年で上回る。※( )は前年の値
・雇用障害者数 1万 3,419人(1万2,879.5人)、実雇用率2.85%( 2.76%)

(資料)令和6年障害者雇用状況調査の集計結果

西日本にある県立病院では、障害者が環境整備、看護補助、事務補助の3部門で働いています。この病院は、病院単体で見ると、現時点では法定雇用率を満たしていますが、今後予定される法定雇用率の引き上げと除外率の引き下げを考えると、更に雇用数を増やす必要があります。

看護補助業務に従事している2名の知的障害者は、それぞれ病棟に配置され、看護師長の指示の下に業務に従事しています。コミュニケーションに課題はあるものの、周囲の理解もあって、今では病棟の貴重な戦力になっています。こうした経験を踏まえ、看護部長としては、新たに障害者を雇用する場合には、特定の病棟に配置するだけでなく、病棟を巡回して医療資材の補充を行うなど、病棟全体の負担軽減に役立つ業務を担ってもらえると助かると考えていました。現状では法定雇用率を満たしているため、事務部に話はしていませんでしたが、更に雇用数を増やす必要があることを知り、「特別なサポートがなくても看護部で受け入れるので、是非、新たな人材を雇用してほしい」と事務部に提案されたそうです。

背景には、障害者雇用の経験を通じて、指示の仕方や対応について看護部内での理解が進んだことがあるのでしょう。看護部が障害者雇用を前向きに考えていることを知り、事務部も心強く感じたことと思います。ハローワークや法人本部から障害者雇用について指導を受ける事務部では、院内にどうお願いすれば良いか悩むことが多いものですが、医療現場で戦力となっている先例ができると、現場から障害者の担う業務の提案があるなど、障害者雇用を活用したいという流れが自然に出てくることを、この病院の事例からも学ぶことができます。

国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成セミナーの大阪での令和6年度第2回目が、11月25日から4日間の予定でオンラインで開催されました。セミナーには、国の5機関から5名が参加されました。今年度からオンライン形式にしたことで、地方からの参加もしやすくなっているはずですが、受講者数は過去最少となり、各機関でのセミナーの周知に課題があることを感じました。

初日の講義後の質疑の時間では、1名から質問がありました。配属された後に、当初の想定とは異なり実施できる業務の範囲が限られているため、対応に苦労されているということでした。できない業務を外していくと、実施できる業務だけでは一人分の業務量にならないという問題でした。このような場合、配属先の特定の課の業務だけではなく、同様の業務を他の課からも切り出して担当させるようにすれば、一人分の業務にできる可能性があることを説明しました。業務を切り出す範囲を、課の単位から部の単位に広げたり、組織全体に広げることで、個々の業務の量は少なくても、集約することで一定の業務量が確保できます。事務補助の定型的な業務の中には、このような集約化に馴染む業務も多く、障害のある職員が担うことで職場の「働き方改革」にもつながります。十分な仕事量を見出せず、障害者雇用に行き詰まり感を持たれているようなら、これを機会に課の範囲を超えた業務の切り出しを検討してみるのも良いでしょう。

(講義資料)

「公的部門における職場適応支援者の役割①~働き方改革に資する障害者雇用の進め方~」「公的部門における職場適応支援者の役割②~公務部門での障害者雇用事例に学ぶ~」

 

福井公共職業安定所・福井労働局が主催する令和6年度雇用管理セミナーが2024年11月15日に福井県自治会館(福井市)で開催され、製造業や医療福祉業など幅広い産業分野からの参加がありました。ハイブリッド形式の開催で、会場参加者68社のほか、オンラインで31社が参加されました。セミナーでは、福井公共職業安定所所長の山内伸二さんの挨拶に続き、次長(雇用支援担当)の上中祥惠さんから「公正な採用選考について」説明がありました。続いて、当ネットワーク代表の依田から「経営者の観点から見た障害者雇用の効果と進め方〜事例に学ぶ業務の切り出し〜」をテーマに70分ほど講演し、その後20分ほど会場からの質問にお答えしました。最後に、福井労働局雇用環境・均等室から「育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法の改正のポイントについて」説明がありました。

今回のセミナーは、公共職業安定所が主催していることもあり、多くの事業所からの参加がありました。セミナーの行政説明でも分かるように、事業所の担当者としては、障害者雇用に限らず様々な課題への対応が求められています。そうした中で、障害者雇用への対応が他の課題にどう関係しているのか、講演では「多様性に対応した働きやすい職場づくり」という視点でもお話ししました。質疑応答では、精神障害者の雇用に関する質問が多く出ました。新たに精神障害者を雇用する際に上司や同僚に障害のことをどのように説明すれば良いか、精神障害者保健福祉手帳は取得していないが職場で不適応が生じている従業員に手帳取得を促して良いか、新たに雇用した精神障害のある従業員に作業目標量を示して良いか、しばしば休んでしまう精神障害のある従業員にどう対応すれば良いかなど、実際に雇用している中で感じられている質問でした。

これまで精神障害者の雇用が未経験という事業所が多く、どのように接すれば良いのか、どういう仕事を切り出したら良いのか、不安を感じている担当者も多いように思いました。一方で、手帳は持っていなくても、メンタル面の不調で休職を繰り返したり、発達障害の傾向があり社員との関係が上手くいっていない一般の従業員を抱えている事業所もあるかと思います。このような場合、本人の自己理解も不十分で、周囲の配慮もしにくい面があります。むしろ、精神障害者保健福祉手帳を持って障害者枠で採用された人の方が、本人も障害を受容し周囲も配慮しやすい面があります。その意味では、精神障害者の雇用を進めることで、メンタル不調者や発達障害の傾向のある従業員に対応するスキルが身につく面もあるでしょう。

そうした点も含め、今回のセミナーが事業所の皆さんが精神障害者の雇用にチャレンジするきっかけになれば良いと思いました。

(講演資料)「経営者の観点から見た障害者雇用の効果と進め方〜事例に学ぶ業務の切り出し〜」

 

今年3月に福岡市で当ネットワーク主催で開催した「医療機関の障害者雇用に関するセミナー」をきっかけに、福岡市立障がい者就労支援センターが「同業種(医療)交流会」を8月から3回シリーズで開催されました。

第1回(8月20日)

 講師 福岡市発達教育センター長

    「特別支援学校での就労に向けた取り組みについて」

第2回(9月20日)

 講師 社会福祉法人野の花学園 中央第一統括施設長

    「就労系福祉サービス事業所の概要や訓練内容等について」

第3回(10月30日)

 講師 福岡県立福岡高等視覚特別支援学校教諭

    「ヘルスキーパー、理療の説明、医療機関でのヘルスキーパー就労事例等」

  紹介 「福岡市立障がい者就労支援センターの支援について」

毎回10〜11病院から14〜16人が参加され、講師による話題提供の後に約60分間の意見交流が行われました。

参加者からは、障害者雇用セミナーなどに参加しても、異業種の集まりのために課題になるところが違うこともあるが、今回のような同業種交流会は共通の課題が多く、知りたい内容について直接やり取りできて有意義だったという意見がありました。また、複数回の交流会のため顔見知りとなる方もできて、気軽に話せるようになったという感想もありました。

交流会の最後には「今回、この交流会に参加し、同様の課題、悩みを有する方々と話すことができ、決して孤独ではないことに気づいた」と話された参加者もいて、主催者としては開催したことの意義を改めて感じたそうです。

医療機関を対象とした同業種交流会は3回で一旦終了となりますが、この後は、福岡市立障がい者就労支援センターの就労支援相談員(企業支援担当)が病院を訪問し、支援のニーズを聞いて対応されるそうです。

福岡から始まった医療機関の障害者雇用の同業種交流の流れが、今後、全国に広がっていくことを期待しています。