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徳島労働局の主催により、県や市町村等の公務部門を対象とした障害者雇用セミナーが2024年8月30日にオンラインで開催されました。セミナーには徳島県や徳島県教育委員会のほか、県内のすべての市町から参加申し込みがあるなど、障害者雇用に対する関心の高さが窺われました。セミナーでは、徳島労働局職業安定部長の森広茂さんの挨拶に続き、地方障害者雇用担当官の堤智恵さんから「徳島県の障害者雇用の現状」について説明がありました。続いて、障害者就業・生活支援センターわーくわく主任就職支援ワーカーの佐野和明さんから「支援機関との連携について」説明がありました。その後、当ネットワークの依田から「地方公共団体における障害者雇用の進め方〜成功への道筋〜」について60分講演をしました。

講演後には、受講者の皆さんからの質問に佐野さんと二人でお答えしました。質問内容をお聞きすると、民間企業と共通する悩みも多く、民間企業に対する支援を通じて蓄積されてきた支援機関のノウハウが活用できることを、改めて感じさせられました。この点について、公的機関の利用に制約があった障害者就業・生活支援センターのサービスについても、制度の運用が見直され利用しやすくなったことが、佐野さんから紹介されました。

一方で、公務部門特有の問題についても質問がありました。国が作成した「公務部門の障害者雇用マニュアル」等でも推奨されている職場実習について、特定の機関から実習を受け入れることに問題はないのかという質問です。公務員の採用に係る「平等取り扱い原則」とも関連するテーマですが、この点については「職場実習を公募する」ことでクリアできると考えられます。実習を公募するという情報を、教育委員会から近隣の学校に伝えたり、障害者就業・生活支援センターから近隣の就労支援事業所に情報提供することで、特定の機関に限らず広い範囲から応募してもらい、その中から実習生を選考している公務部門の職場もあります。その際には、事前に地元のハローワークに相談いただくのが良いでしょう。

今回のような公務部門を対象としたセミナーは、現場のニーズは相当高いと感じますが、未だ実施している地域は極めて少ない状況です。障害者職業センターの公務部門への関わりが制限されているだけに、労働局が中心となって公務部門への情報提供をしていく必要性は高いでしょう。その意味でも、今回のような取組が全国に広がっていくことを期待されます。

(講演資料)「地方公共団体における障害者雇用の進め方〜成功への道筋〜」

令和6年3月13日に福岡市で開催した「医療機関の障害者雇用に関するセミナー」及び7月26日に東京障害者職業センター多摩支所の主催で開催した医療機関を対象とした雇用サポート講習会などで、医療機関の皆さんから寄せられた質問について、Q&Aに整理して「医療機関の障害者雇用Q&A」に15問追加し、第3版として令和6年8月28日に公開しましたので、ご活用いただければ幸いです。

○  医療機関の障害者雇用Q&A(第3版)

 

(追加質問)

Q10 集中配置の場合には、そこで勤務する障害者の所属はどこにすれば良いのか。

Q13 院内ジョブコーチはどのようにして探せば良いのか。

Q14 院内ジョブコーチの人材を院内から探したいが、適性を見るポイントは何か。

Q15 院内ジョブコーチを外部から採用する場合、処遇はどのようにすれば良いか。

Q17 院内ジョブコーチの配置には特別なコストが必要だが、その財源についてどう考えるのか。

Q18 法人として複数の病院や診療所を経営しているが、法人全体の障害者雇用を進めるために、本部としてどのようなことを行うと良いか。

Q34 障害のある職員が担当している業務だけでは手空き時間が生じてしまうが、どうすれば良いか。

Q35 担当業務が同時期に重なってしまう場合があるが、どのように対応するのか。

Q38 病棟では夜勤などの交代勤務があるが、病棟で働く障害者のサポート体制はどうすれば良いか。

Q41 出勤が不安定で業務に穴が空いてしまうことがあるが、どうすれば良いか。

Q42 障害のある職員の執務環境について配慮すべきことはあるか。

Q44 仕事以外のトラブルに対し、職場はどこまで関われば良いのか。

Q55 患者さんとうまく接することができない者には、どのような業務を担当してもらえば良いか。

Q57 長期間休んでしまった者に対して、どのように扱えば良いか。

Q63 医療機関の職員向け研修について、どのような受講上の配慮をすれば良いか。

独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)が実施している、日本看護協会の認定看護管理者教育課程サードレベルの研修が開講され、JCHO病院15病院のほか国立病院、労災病院、大学病院、県立・市立病院、民間病院12病院から計27名が受講しました。本年の研修も、昨年に引き続きオンラインと対面の組み合わせで実施され、「組織デザインと組織経営」の単元では「働き方改革に資する障害者雇用」をテーマに3時間の講義が令和6年8月27日にオンラインで行われました。

本講義では、看護管理者として、人を生かすことで組織のパフォーマンスを高める視点を学ぶことを目的とし、前半の講義では「健康経営」と「多様性」という切り口で、広く職員全体の状況に目を向ける視点に焦点を当てました。健康経営に関しては、自らの職場の健康経営に看護職がどう係るか、ストレスチェックの集団分析をどう活用するかなど、看護管理者として認識しておくべき点を説明しました。「多様性」については、様々な課題を抱えた人材が共に働く職場において、個人の側に特別な努力を求めたり、できないことを理由に切り捨てるのではなく、職場の環境を変えることで個人の能力を十分発揮させ、戦力にしていくことの大切さを伝えました。

後半のグループワークでは「『働き方改革に資する障害者雇用』を看護部門で進めるとしたらどのような業務を切り出せば、看護職が助かるか」と「自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある看護職の適性に合う仕事は何か」の2つのテーマについて、4つのグルーで意見交換しました。テーマ1では、看護補助者の業務も多忙なので、看護補助者の業務から定型的な業務を切り出せば、看護補助者が看護職の業務を分担しやすくなるといった意見がありました。テーマ2では、発達障害の診断の有無に関わらず対応に悩まれた経験は、受講者の皆さんも多かれ少なかれあるようでした。夜勤が伴う病棟勤務が難しく、配置先に苦労されている中で、比較的定着している職場として、手術室、内視鏡室、透析室の事例が報告されました。業務は定型的でも専門性が求められ、専門性を高めることでモチベーションが保てることに加え、単独で働くのではなく周囲の職員の目配りもしやすい点で、これらの職場には共通点があります。自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある看護職にとって、働きやすい環境のヒントが見出せるようです。このほか、記憶力が優れている人を記憶力が活かせる職場に配置したところ、看護師や医師からも頼りにされて頑張っているという事例や、健康管理センターの採血業務に従事している事例も紹介されました。

法定雇用率の引上げや除外率の引下げで、医療機関の障害者雇用への圧力は今後も強まりますが、法令遵守だから仕方なくという受け身の姿勢ではなく、看護職の職場環境を改善する「働き方改革」に障害者雇用を活用するという積極的な視点を、それぞれの病院に持ち帰っていただくことを受講者の皆さんに期待しています。

(講義資料)「組織デザインと組織運営〜働き方改革に資する障害者雇用〜」

第51回日本職業リハビリテーション学会島根大会が2024年8月23日、24日に松江テルサ(島根県松江市)で開催され、24日午後には「公務部門における障害者雇用の取り組みー今後、求められる支援者像ー」をテーマにした自主ワークショプが行われました。このワークショップは、岡山県職場定着支援トータルアドバイザーの宇野京子さんが企画したもので、指定討論者である一般社団法人職業リハビリテーション協会代表の松為信雄さんの司会で進行しました。最初に宇野さんから企画趣旨の説明があり、続いて話題提供者として、内閣官房内閣総務官室上席障害者雇用専門支援員の加藤公一さんが内閣官房における障害者雇用の取り組み、宇野さんが岡山県知事部局における障害者雇用の取り組みについて、それぞれ報告しました。その後、公務部門の障害者雇用情報サイトの管理者である依田が指定討論者として、「公務部門における障害者雇用の取り組み」について補足説明をしました。補足説明では最初に「公務部門の障害者雇用マニュアル」(内閣官房内閣人事局・厚生労働省・人事院)について紹介しました。

「公務部門の障害者雇用マニュアル」(内閣官房内閣人事局、厚生労働省、人事院:令和6年1月改訂)

公務部門で障害者雇用を進める上で、活用できる制度や推奨される取り組みを詳細に解説した内容の充実したマニュアルが既に各省庁に対して示され、地方公共団体にも総務省から情報提供されているのですが、現場であまり認識されず活用されていないのは、大変残念なことです。今後は、こうしたマニュアルも活用しながら、省庁や地方公共団体の枠を超えて、公務部門での雇用事例やノウハウの共有が図られていく必要があります。

公務部門の障害者雇用の推進体制については、対外的に発表されることはほとんどなく、他省庁や他の地方公共団体の取り組みを知る機会もありませんでした。今回のワークショップでは、話題提供者のお二人が組織との間で時間をかけて信頼関係を築いてきたことで、組織内の取り組みについて発表いただ区ことができましたが、これを機会に公務部門の障害者雇用に対する関心が高まるとともに、情報共有や情報交換の機会が増えていくことが期待されます。

(資料)

「公務部門における障害者雇用の取り組み」(指定討論者:依田)

(参考資料)

「公務部門の職場の特性と障害者雇用の課題」(職業リハビリテーション第34巻No1)

 

今年3月に福岡市で開催した「医療機関の障害者雇用に関するセミナー」をきっかけに、福岡市内の医療機関では情報交換を望む声が高まりを見せているそうです。こうした中で、セミナーにも登壇された黒田小夜子さんの所属する福岡市立障がい者就労支援センターの主催により、「同業種(医療)交流会」が3回シリーズで開催されることになり、その第1回が8月20日に福岡市舞鶴庁舎(福岡市)で開催されました。シリーズでは、毎回、話題提供者からの説明後に、参加者がグループに分かれて意見交流会を行います。今回は、福岡市教育委員会福岡市発達教育センター所長の松本学さんから、「特別支援学校での就労に向けた取り組み」について話題提供があり、その後、11病院16名の参加者が4グループに分かれて意見交換・情報交流を行いました。1回目で初めは多少緊張もあったようですが、さすが同業者だけあって話題には事欠かず、すぐに打ち解けられたようで、「また次回も参加したい」という声が聞かれるなど、とても有意義な交流会となったそうです。次回の開催は9月20日が予定されています。

(参考)「同業種(医療)交流会」開催案内

障害のあるスタッフが院内で担う業務の中には、これまで看護助手や調理助手が行なっていた業務も多いです。

都内にある公的病院では、特別支援学校を卒業して新卒で採用された男性スタッフが調理補助の業務で働いています。下膳された食器から残滓をスポンジで取り除き、食器の種類ごとに移動式シンクに沈めます。それを引き上げて食洗機にセットする業務ですが、種類ごとに100個以上ある食器を1つずつシンクから引き上げて食洗機にセットするのは、腰にも負担がかかるため、年齢の高い調理助手にはきつい作業でした。そこに若い職員が調理補助として加わり、シンクから次々に食器を引き上げ、両手を使ってスピーディーに食洗機にセットしていく姿を見て、調理助手の皆さんから「とても助かる」と感謝されているそうです。

この病院の調理部門には、もう一人、精神障害のある若い女性スタッフも配置され、小鉢への料理の盛り付けと配膳カートへのセットを担当しています。最初は短時間の勤務でしたが、丁寧な盛り付けと手際の良さが評価され、本人の希望で勤務時間も少しずつ長くなり、今では調理部門の戦力として活躍しています。

二人とも周りの職員から感謝されることで、自分が貢献できていることを実感でき、仕事にも前向きに取り組めているようです。

最近では、看護助手や調理助手の募集をしても人材が確保できず、高齢になっても働き続ける人も増えているので、院内で障害のあるスタッフの若い力が活躍する機会は更に増えていくことでしょう。

東京障害者職業センター多摩支所の主催で、医療機関を対象とした雇用管理サポート講習会が7月26日(金)に立川市で開催され、26医療機関から30名が参加されました。講習会では当ネットワークの依田から「病院事例に学ぶ障害者雇用の進め方」について1時間ほど話題提供を行うとともに、東京障害者職業センター多摩支所から「障害者職業センター事業主支援のご案内」について説明し、その後5つのグループに分かれて意見交換が行われました。参加者には大学病院、都立病院、赤十字病院、民間病院のほか、複数の病院やクリニックを経営する法人など様々でしたが、医療という同業種間での共通的な理解があるため、どのグループも活発な意見交換が行われていました。各グループからの発表後の講評では、今回参加されたのは比較的規模が大きい病院が多かったため、一般的な「分散型」の配置に加えて、チームで就労する「集中型」の配置も選択肢として紹介しました。また、院内から切り出す職域について、医療職が行っている業務の中から切り出すことで、医療職からも感謝される「働き方改革に資する障害者雇用」を目指すと良いことを説明しました。

一般的なセミナーでは、多業種の中に医療機関がポツンといるため、なかなか話が伝わらない面もありますが、今回は医療機関が対象なので参加してみたという声も多くありました。多忙な業務の中で研修に参加することに院内の理解を得る上でも、今後は、こうした医療機関を対象とした研修を企画することは効果的でしょう。

(講演資料)

「病院事例に学ぶ障害者雇用の進め方」

国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成セミナーの東京での令和6年度第1回目が、7月22日から4日間の予定でオンラインで開催されました。セミナーには、国の15機関から19名が参加されました。

今回の研修には、福井県や北海道にある国機関からの参加もありましたが、オンラインのメリットを活かせる遠方からの参加者はまだ僅かで、今後の受講者の増加が期待されます。

講演後の質疑の時間では、受講者から予めお聞きしていた2点について、補足説明を行いました。

1点目は、「合理的配慮」として不適切とも思われる過大な要求があった場合の対応についてです。公的機関に対しては、ともすれば福祉的な対応までが求められがちですが、「雇用」と「福祉」とでは合理的配慮の目的も異なり、「雇用」においては、支払われる賃金に見合うだけの「能力を発揮」してもらうための配慮を考えるべきという視点で説明しました。

2点目は、各地に所在する出先機関の障害者雇用を総括する立場の組織において、現場の状況を把握したり職場の管理者をサポートする効果的な方法についてです。講義テキストの中でも紹介されている内閣官房や埼玉県で活用されているクラウド型のWeb日報システムは、現場が離れた職場で働く障害者や管理者を支援するシステムとして活用することも可能性なことを説明しました。

今回の受講生には、現場で障害者の指導やサポートに直接従事している職員や、個々の雇用現場を側面からサポートする管理部門の職員がいたり、職員で障害者雇用担当を命じられた場合のほか、障害者雇用のために新たに支援員として採用された方もいるなど、背景も様々でした。それでも、皆さん障害者雇用の質を向上させるために少しでも使えるスキルを習得しようと、真剣に受講されている姿勢を感じました。

(講演資料)

「公的部門における職場適応支援者の役割①~働き方改革に資する障害者雇用の進め方~」「公的部門における職場適応支援者の役割②~公務部門での障害者雇用事例に学ぶ~」

「遠隔支援という手法の例(Web日報システム)」

国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成セミナーの大阪での令和6年度第1回目が、7月17日から4日間の予定でオンラインで開催されました。セミナーには、国の8機関から11名が参加されました。

令和元年度から東京と大阪の会場で開催されてきたセミナーは、今年度から職場実習以外の講義はオンラインで開催されることになりました。これにより遠方の受講者も参加しやすくなり、受講者の増加も期待されましたが、今回は従来並みの参加にとどまりました。障害者雇用を進めている国機関は全国に所在しているので、オンラインのメリットを活かして、今後は受講者の増加を期待したいところです。

オンラインの講義後の質疑の時間では、2名から質問がありました。支援機関を活用する際の個人情報やプライバシー確保に関する質問については、支援機関には守秘義務が課せられていることに加え、安定的な就労のためにも支援機関との情報共有が必要なことを本人に説明し、理解を得ることが大切なことを説明しました。

新たな障害者を雇用した職場で既に働いている障害者への対応に関する質問については、一般論として、先に雇用された障害者が十分な仕事を与えられず、働かなくても良いと考えてしまっている場合が問題になることを指摘しました。このような場合、後輩が一所懸命に働く姿を見て自分も頑張るようになる可能性もありますが、後輩の足を引っ張る言動をとるような場合には、同じ職場ではなく別の職場に配置した方が良いこと、現在の仕事が合っていない可能性もあるので、より能力を発揮できる仕事に変えることで、モチベーションが上がることもある旨を説明しました。

受講者との質疑をした印象としては、オンラインでも質問がしにくいという感じはしませんでした。一方で、受講者同士の交流という点では、対面のように休憩時間でのやりとりもないため、工夫が必要だと感じました。この点については、セミナー委託元の厚生労働省を含め、今後の改善に期待したいところです。

(講演資料)

「公的部門における職場適応支援者の役割①~働き方改革に資する障害者雇用の進め方~」「公的部門における職場適応支援者の役割②~公務部門での障害者雇用事例に学ぶ~」

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の運営する東京障害者職業センター多摩支所(東京都立川市)では、7月26日(金)午後に「医療機関における障害者雇用の勧め~成功のためのヒント~」をテーマとした講習会を医療機関を対象に開催することとなりました。当ネットワークの依田が「病院事例に学ぶ障害者雇用の進め方」について講演するとともに、講演後には医療機関の皆さんの意見交換の時間も設けられています。多摩地域の医療機関が中心とは思いますが、定員にも若干余裕があるようなので、これからの障害者雇用の進め方について情報を集めたい病院の皆さんには、有意義な場になるかと思いますので、ご案内させていただきます。