新着情報

東京都福祉局が特定非営利活動法人WEL’Sに委託している「就労支援機関連携スキル向上事業」の「マッチングスキル等向上研修」のプログラムのうち、11月24日と27日に行われた演習に企業トレーナーとして参加しました。この研修では、発達障害のある者が採用面接を受けるのに際し、就労支援機関が利用者と企業からアセスメントを行い、企業にどのように説明するかをロールプレイで試します。演習は4〜5人のグループに分かれ、それぞれに福祉トレーナーと企業トレーナーが配置され、福祉トレーナーは自己理解の乏しい発達障害のある利用者役、企業トレーナーは障害者雇用経験の少ない企業の人事担当者役を演じます。採用面接のロールプレイでは、企業側が何を求めているかのニーズを踏まえ、利用者の強みや合理的配慮の説明、職域提案を行い、それに対してトレーナーからフィードバックを行うことで、マッチングスキルの向上を目指します。受講者の中には企業の人事担当者と話す機会の少なかった者も多く、企業側の視点は新鮮に感じられたようです。企業としても、支援機関に企業の視点を知ってもらうことは大変意味があると考えているので、こうした研修が全国に広がることを期待しています。

本年4月号で当ネットワークのことを紹介いただいたメンタルヘルスマガジン「こころの元気+」を発行している認定NPO法人地域精神保健福祉機構(コンボ)では、精神疾患を経験した人たちだけで自分達の体験と感覚をベースに精神疾患について書いた「生きづらさをひも解く 私たちの精神疾患」(YPS横浜ピアスタッフ協会、NPO法人コンボ、薩山正子編著)を発行しました。精神疾患について書かれた本は、医師の視点で書かれたものがほとんどですが、この本は体験者の立場で精神疾患を総体的に捉えて論じたもので、多くの重要な気づきが得られる内容が含まれています。結果として現れる「症状」ではなく、その背景にある「生きづらさ」に目を向け、「いい感じの自分」でいられるよう自己決定していくことの意義を分かりやすく語っています。精神障害のある人たちは医療機関の雇用現場でも増えていますが、医療や福祉の側の視点ではなく、体験者の視点について知ることは、安定的な雇用を実現する上でも意味があるでしょう。

(本の紹介)「生きづらさをひも解く 私たちの精神疾患」

都道府県等の教育委員会の障害者雇用担当者の皆さんから伺った内容を整理した「都道府県等教育委員会の障害者雇用事例」について、東京都教育委員会から各道府県教育委員会事務局の障害者雇用担当課長宛に情報提供いただきました。

「都道府県等教育委員会の障害者雇用事例」

雇用事例としては、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、鳥取県、高知県、熊本県、札幌市、川崎市、大阪市の11都府県市の障害者雇用事例が紹介されています。

教育委員会では、来年度からの法定雇用率の引上げと教育事業の除外率の引下げを直前に控え、障害者雇用の充実を図ることが急務となっています。教育委員会という業務の共通性が高い職場での雇用事例は、他の教育委員会でも具体的な業務内容をイメージできるため、障害者雇用の促進につながりやすいと思われます。

作成に協力いただくとともに、情報提供にご理解いただいた教育委員会の皆様には心から感謝いたします。

「医療機関の障害者雇用ネットワーク」では、これまで病院の経営者や看護部門向けに障害者雇用の啓発資料を提供してきましたが、最近では薬剤部門での障害者雇用の職域開発が進んできたことを踏まえ、新たに薬剤業務での障害者雇用の職域例や障害者雇用のメリットなどについて紹介する資料を作成しました。

是非、薬剤部長にもご覧いただき、新たな障害者雇用の可能性について院内で検討いただければ幸いです。

「薬剤業務での障害者雇用〜タスクシフトで効率アップ〜」

特例子会社を中心に全国の200社以上が参加する一般社団法人障害者雇用企業支援協会(SACEC)の会員向けニュースには、同協会顧問で元厚生労働省障害者雇用対策課長の土屋喜久さんによる「企業訪問記」が掲載されていますが、2023年9月には国立がん研究センター東病院の訪問記が掲載されました。土屋さんと国立がん研究センター東病院の了解のもとに、訪問記を転載させていただきました。

SACECニュース(2023年9月21日発行)の「企業訪問記」(国立がん研究センター東病院)

2023年5月29日にオンラインで開催された「障害のある人の欠格条項って何だろうQ&A」 出版記念イベントでも講演された全盲の精神科医である福場将太さんが、NHKの放送で紹介されました。福場さんは北海道美唄市にある精神科クリニックで精神科医として勤務されています。映像では診察室での診療の様子も具体的に分かります。

「ぼくだからできること 美唄・全盲の精神科医の日々」

 

 

国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)では、知的障害や精神障害のあるスタッフ16名が病院内の業務に従事しています。同病院では、2011年に事務部管理課庶務係に属する組織として「オフィスオーク」を設置し、ジョブコーチの指導支援の下に障害のあるスタッフが働く環境を整備しました。オフィスオークでは、院内から受注する業務が増えるのに合わせて、年々働くスタッフの数も増やしてきました。2016年度以降は、薬剤部からも仕事を発注するようになり、今では薬剤部から様々な業務を発注するなど、オフィスオークは欠かせない存在となっているそうです。

薬剤部長の川﨑敏克さんに、薬剤部の目から見た病院の障害者雇用についてお聞きしました。

インタビュー記事

日本職業リハビリテーション学会第50回かながわ大会が2023年8月25日〜26日に神奈川県立保健福祉大学(横須賀市)で開催され、2日目の午前には大会企画シンポジウムⅡ「雇用する側あるいは働く障害者を支える側はこれからの時代にどのような取り組みを行っていくの か」が行われました。シンポジウムの司会は学会長の志賀利一さん(横浜やまびこの里)で、シンポジストとして小形秀夫さん(障害者雇用部会)、酒井大介さん(全国就労移行支援事業所連絡協議会)、久保寺一男さん(就労継続支援 A 型事業所全国協議会)とともに、当ネットワーク代表の依田が「公務部門の障害者雇用情報サイト管理者」の立場で参加しました。

(説明資料)「公務部門における障害者雇用を推進するための取組」

職場実習が行われてこなかったり、地域の支援機関があまり活用されていないなど、公務部門の障害者雇用には一時代前の印象もありますが、役所が異なっても業務は似通っている特徴に加え、「公務部門における障害者雇用マニュアル」や「障害者活躍推進計画」の策定など、統一的な方向性を示せるメリットもあります。現場では十分理解や活用がされていない理念やノウハウも多いですが、地域の支援機関が分かりやすく説明することで実質が伴えば、新たな障害者雇用のモデルも生み出され、好事例の横展開が期待できる分野と言えるでしょう。そのためにも、特例子会社間で障害者雇用のノウハウを共有する障害者雇用部会のように、公務部門でも障害者雇用のノウハウを共有できる場づくりが求められるでしょう。

独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)が実施している、日本看護協会の認定看護管理者教育課程サードレベルの研修が開講され、JCHO病院16病院のほか国立病院、労災病院、大学病院、県立・私立病院、民間病院16病院から計33名が受講しました。本年の研修は、昨年に引き続きオンラインと対面の組み合わせで実施され、「組織デザインと組織経営」の単元では「働き方改革に資する障害者雇用」をテーマに3時間の講義をオンラインで行いました。

前半の講義では、最近企業の人事関係者の間で話題になっている「心理的安全性」について、提唱者であるハーバード大学のエイミー・エドモンドソンは、病院の優れたチームワークを持つチームの方がヒューマンエラーの発生率が高いという調査結果から、優れたチームほどオープンに情報を共有するためエラーを報告する回数も多いと捉え、この現象を「チームの心理的安全性」と呼んだことを紹介しました。「心理的安全性」の考え方が医療現場の研究から生まれたことからも、看護管理者の皆さんには「心理的安全性」の高い職場づくりに取り組んでいただければと思います。

後半のグループワークでは「『働き方改革に資する障害者雇用』自院で進めるとしたらどのような業務を切り出したいか」と「自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある看護職の適性に合う仕事は何か」の2つのテーマについて、5つのグルーで意見交換してもらいました。テーマ1では、看護師の業務を看護補助者にタスクシフトするため、障害者雇用で看護補助者の業務から定型的なものを切り出し、看護補助者の負担を軽くしたいという意見が多く出ました。テーマ2では、新人看護師は病棟配置が基本だが、担当患者を一人から増やせなかったり、マルチタスクが必要な病棟業務は難しい新人もいるといった意見がありました。そうした中で、コミュニケーションに問題のある新人を手術室に配置したことで定着し、スキルアップにも積極的に取り組んでいる経験から、適性のある業務として手術室等もあるといった意見もありました。また、周りが困っていても本人に自覚がない場合は、別業務に異動させることが難しいといった意見に対し、本人のこだわりのあった診療科に関連する業務の中から、判断の必要が少ない業務に変えることで納得が得られたとの報告もありました。講評では、異動先を探す場合にはモチベーションが保てることが大切で、看護師でなくてもできる作業をさせるのではなく、国家資格が必要な業務でスキルアップを目指せるような業務が望ましいことを伝えました。

来年からの法定雇用率の引上げと除外率の引下げで、医療機関の障害者雇用への圧力は強まることが予想されますが、そうした中でも看護管理者の皆さんが障害者雇用を自分たちの「働き方改革」に資するものとして受け止め、この機会を生かしていかれることを期待しています。

(講義資料)「組織デザインと組織運営〜働き方改革に資する障害者雇用〜」

このコーナーでも度々紹介してきた国立研究開発法人国立がん研究センター(中央病院:東京都中央区、東病院:千葉県柏市)では、院内からさまざまな業務を切り出し障害のあるスタッフが従事することで、「医療職の働き方改革」にも貢献しています。

国立がん研究センターでは、毎年度の事業計画に加え、6年間の中長期計画を策定しています。そこでは、業務運営に関する重要事項の一つとして「人事の最適化」が掲げられ、タスク・シフティングと障害者雇用について以下のような記載がされています。

イ 女性の働きやすい環境を整備するとともに、医師の本来の役割が発揮できるよう、医師とその他医療従事者との役割分担を見直し、タスク・シフティングを推進し、職員にとって魅力的で働きやすい職場環境の整備を行うことにより離職防止に努める。

ウ 障がい者が、その能力と適正に応じた雇用の場に就き、地域で自律できる社会の実現に貢献するため、障がい者の雇用を推進するとともに、サポート要員の確保など働きやすい環境の整備にも取り組む。

さらに、毎年度の事業計画の中では、「医師以外の職種についてもタスクシフトについて検討を行う」とともに、「障害者支援施設と協力し、引き続き障害者の雇用を推進する」「ジョブコーチを確保、教育し、障害者の働きやすい環境の整備に取り組む」ことが明記されています。

こうした計画の記載からは、タスク・シフティングと障害者雇用とは密接に関連すると認識されていることが窺われます。国立がん研究センターのような高度専門医療機関において、経営計画の中に障害者雇用が記載され、それが医療職のタスク・シフティングにも貢献するものと位置付けられていることは、他病院の皆さんにも大いに参考になることでしょう。