新着情報

宮城労働局主催の「公務部門における障害者雇用セミナー」が12月2日にハローワーク仙台会議室(宮城県仙台市)で開催され、「公務部門における障害者雇用〜成功への道筋〜」をテーマに講演を行いました。会場には県庁、教育委員会、市町村などから30名以上の皆さんが参加されました。

講演後の質疑では、公務部門では利用に制約のある支援サービスについて質問がありました。障害者職業センターでは公務部門の個別支援は行えないとされていますが、公務部門で行われる研修で講師をすることは可能とされているので、市町村等で企画した研修会に講師として来庁してもらう際に、職場でどのような業務の切り出しが可能か現場を見てもらい、専門家としてのアドバイスを受けることは可能である旨を説明しました。また、障害者就業・生活支援センターについても、就業支援は公務部門は対象外とされる一方で生活支援は可能とされており、就業支援と生活支援は密接に関係するため、センターによっては生活支援の位置付けの下に就業支援に関わるアドバイスも行っている実態があることを説明しました。この点はセンターによって厳格に考えるところもあるので、一概には言えませんが、まずは相談してみる価値があるでしょう。

このほかセミナーでは、株式会社C&Cウェルフェア(北海道江別市)代表取締役の横堀大さんから「障害者雇用におけるシステム構築について」報告があるとともに、ハローワーク仙台の精神障害者雇用トータルサポーターから「発達・精神障害者しごとサポーター養成講座」の説明がありました。横堀さんの会社では、ギフトカタログの手書きの配送申込書を障害のあるスタッフがデータ入力していますが、スタッフの能力に応じて入力作業を3種類に分けるとともに、1つの作業を2人が別々に行いダブルチェックすることで、ミスの発生を防止するようにしています。データ入力系の仕事は公務部門でも大量にあるため、市町村のみなさんも関心がある様子でした。

今回のセミナーは、今年6月に沖縄で開催されたものと同様に、労働局が主催して県や市町村を対象に開催されたものです。障害者雇用のノウハウを必要とされる県や市町村の皆さんにとっては、こうした研修の機会は大変貴重ですので、他の労働局にもこうしたセミナー開催の動きが広がることが期待されます。

(講演資料)「公務部門における障害者雇用〜成功への道筋〜」

国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成セミナーの大阪での令和4年度第2回目が、11月24日からドーンセンター(大阪市)で開催されました。セミナーには、国の6機関から7名が参加されました。参加者の中には、現場で1人の障害者の雇用支援を担当している方がいる一方で、その機関全体の障害者雇用を総括する立場の方もいました。このため講義では、既に雇用している障害者の定着支援だけなく、採用段階でのマッチングや配置方法などについても、お話ししています。採用時のマッチングを確認する職場実習については、これまで公務部門ではあまり行われていませんでしたが、精神障害者や知的障害者の雇用経験を重ねる中で、各府省でも必要性が認識されてきたようで、複数の機関から職場実習の導入を検討している説明がありました。

また、今回のセミナーでは、これまで東京と大阪で計16回開催されてきたセミナーで初めて、国の2機関から障害者雇用の事例発表があります。公務部門で同じ苦労をされている方の話には、何より共感できるものがあるため、今後は、こうした公務部門内での情報交換の機会も作っていく必要があるでしょう。

(講演資料)「公的部門における職場適応支援者の役割①②」

 

福岡県にある民間の精神科病院で使われているシーツ交換マニュアルは、作業の細かな工程ごとに写真入りで丁寧に作成されていて、これを見ることでスムーズに仕事を覚えられるようになっています。実はこのマニュアルは、特別支援学校からインターンシップで病院に来た軽度知的障害のある学生が作成したものです。実習生には、シーツ交換、認知症デイケアの補助、環境整備等を体験してもらいましたが、これからの時代は情報技術があると活躍できる職域も増えると考えた病院では、PC操作の体験もしてもらいました。最初に少しだけ操作方法を説明した上で、シーツ交換作業の録画動画から静止画を切り出し、ポイントとなる工程ごとに静止画を選んで貼り付け、説明文も挿入してもらいました。病院側でも、いつかこういうマニュアルを作りたいと思っていたので、ちょうど良い機会となったようです。実習生のPC操作は特に問題もなく、説明文の表現について若干アドバイスする程度だったそうです。実習生にとってマニュアル作りは貴重な体験の機会となりましたが、完成したマニュアルは病院の「宝物」になったそうです。知的障害と聞いただけで、できることは限られると考えられがちですが、この病院のように既成概念にとらわれず新たな可能性を見出そうとする姿勢は、とても大切なことでしょう。

東京都町田市にある精神科200床の鶴が丘ガーデンホスピタル(後藤晶子院長)で開催された障害者雇用研修において、「精神科医療機関の機能強化につながる障害者雇用〜今日から始める!病院の次のステップに向けて〜」をテーマにした講演を行いました。同院は昨年で開院50年を迎えましたが、開院当初からPSWを複数採用しチーム医療を進めるなど、精神科医療における先進的な取り組みを進めてきましたが、地域貢献の強化と労働者確保に向けた新たな取組みの一環として、障害者雇用に本格的に取り組むため、今回の研修が企画されました。研修には、後藤院長をはじめ各部門から職員34名が参加され、大変熱心に受講されていました。今回の研修は、第1回目のキックオフという位置付けで、第2回目は障害者雇用を実践している都内の精神科病院の方からお話を伺う予定です。長期入院する患者が減少する一方、企業等で働く精神障害者も増加する中で、病院が自ら障害者を雇用することで得る経験やノウハウは大きいでしょう。研修後に皆さんとお話しながら、多職種連携が進んでいる病院の強みも活かして、地域の障害者雇用を支える病院へと発展していかれる可能性を感じました。

(講演資料)「精神科医療機関の機能強化につながる障害者雇用〜今日から始める!病院の次のステップに向けて〜」

障害者雇用の現場では、心身の障害特性を踏まえて、各自の能力が発揮できる職務を割り当てる「マッチング」を適切に行うことにより、想定以上の生産性が得られる場合が少なくありません。

こうしたことに加え、障害の特性に伴う作業上の苦手な部分を補うために、ジグ(治具)という補助的な道具が活用される場合もあります。しかしながら、製造業等の他の産業分野に比べると、医療分野でのジグの活用はあまり知られていないのが現場です。

医療分野の業務は、病院が異なっても作業内容は共通しているものが多く、他院で開発された職域は自院でも導入できるものが多いという特性がありますが、このことはジグについても同様に言えることでしょう。

このため、先進的な医療機関で活用されているジグの事例を紹介する「ジグ活用事例ライブラリー」を新たに開設し、医療機関の皆さんの参考にしていただくことにしました。

 

「ジグ活用事例ライブラリー」

 

紹介事例については、当該医療機関のご協力を得て、写真を添付するなど分かりやすい説明をお願いするとともに、できるだけ医療機関名も付記させていただきました。

「ジグ活用事例ライブラリー」は、現場での創意工夫の事例を紹介いただくことで、一層充実したものにしていくことができますので、皆さんからの事例紹介も是非お願いいたします。共有いただける事例については、以下までご連絡ください。

mediem.net@gmail.com

特定非営利活動法人全国就業支援ネットワークの第23回定例研究・研修会が10月21日と22日の2日間にわたり、あべのハルカス(大阪市阿倍野区)で開催されました。1日目には、当ネットワークの依田が「障害者雇用のこれから〜制度発足20年の立ち位置と視座〜」をテーマに基調講演を行いました。

障害者就業・生活支援センターは、厚生省と労働省が2001年に統合されるのに先立ち、両省の統合メリットが一番あるのは、障害のある方の働く支援環境の整備であるとの意識の下に、1999年度に試行事業をスタートさせ、2002年の障害者雇用促進法の改正で制度化されたものです。現在では全国に338センターが設置され、地域における障害者の雇用・就労支援の基幹的な役割が期待されています。

研究・研修会の1日目には、株式会社パプアニューギニア海産代表取締役の武藤北斗さんの「多様な働き方」についての基調講演も行われました。パート21名、社員3名に社長という年商1億円ほどの会社ですが、パートの募集時には全国から応募が殺到するなど、その内容は興味深いものでした。関心のある方は、武藤さんの書かれた本「生きる職場 小さなエビ工場の人を縛らない働き方」(イースト・プレス)をご覧ください。

2つの基調講演後には、NPO法人ディーセントワーク・ラボ代表理事の中尾文香さんから「それぞれに合った働き方を考える」をテーマとした講演があり、武藤さんの取り組みの意義について、ディヴィッド・コルブの「経験学習モデル」を紹介しながら説明されました。

制度発足から20年を迎えたタイミングで、支援する立場の側に対して、主催者から投げかけた「その働き方、幸せですか?」という問いかけは、多くの支援者の心に宿題を残したようでした。

(講演資料)「障害者雇用のこれから〜制度発足20年の立ち位置と視座〜」

東京都内で公的病院を運営している法人の本部では、発達障害のあるスタッフが事務補助の仕事をしています。この職場では、障害のあるスタッフが安定的に働けるよう、web日報システムのSPIS(エスピス)を導入しています。SPISでは、毎日の業務が終了する際に、障害のあるスタッフが自身のメンタル状態を職場のPCから入力し、それを閲覧する人事課の職員がコメントを書き込みます。この画面は、外部の支援機関も閲覧できるため、必要に応じて支援機関の専門スタッフからも、障害のあるスタッフや人事課の職員にアドバイスしてくれます。このシステムを利用することで、外見や本人との会話だけでは分からないメンタル面の状態が把握できるため、不調時にも早めの対応ができ、安定的な雇用が実現できています。

SPISの活用効果もあって、雇用が長期的に安定してきたことから、人事課では新たなスキルアップの目標を示すことを考えました。たまたまコロナ感染が拡大した時期で自宅待機の時間もあったことから、その時間を活用して「健康管理能力検定」の受験を勧めてみました。本人が努力した結果、試験に見事合格できたことから、次なるステップとして、健康経営の取組の一環として、職員研修で健康管理の話をしてもらうことを提案しました。自らの体験を含めた講義は、受講者からとても評判だったそうです。その結果、障害のあるスタッフに対するイメージは随分良くなったようですが、何よりも人に教えて喜んでもらえた経験は、本人にとっても大きな自信になったようです。

新型コロナウイルスの影響で、障害者や高齢者の日常生活には大きな制約が生じています。感染予防のための「三密」を避ける行動が新たな不便さを生んでいることが数多く指摘されています。こうした新たな日常生活において、障害者や高齢者が使用する製品やサービスのアクセシビリティに関する配慮が確保されるよう、国際規格を検討する委員会がスタートしました。

「新たな日常生活における障害者・高齢者アクセシビリティ配慮に関する国際標準化委員会」は、これまで障害者や高齢者の配慮に関する国際規格(ISO)や日本産業規格(JIS)の作成に関わってきた公益財団法人共用品推進機構が事務局を担当し、委員には規格作成に関する専門家や障害者団体の皆さんに加え、当ネットワーク代表の依田も参加しています。第1回目の委員会は令和4年9月29日にオンラインで開催され、経済産業署の担当課(ヘルスケア産業課医療・福祉機器産業室、国際標準課)から趣旨説明があり、2年後の新規格提案を目標に検討が進められることになりました。

奈良県立医科大学の障害者雇用推進係で働かれている皆さんから、障害者雇用の全国発信フォーラム「私たちが主役だ」の開催のお知らせがありました。当日は係員の皆さんの進行で、係員38名の自己紹介(担当部署と業務の感想)、病棟発表「僕から見た上司」、パネルディスカッション「私たちのことをわかりやすく伝えたいです」、ピアノ演奏など盛りだくさんの内容が予定されています。会場に来場いただくほか、ネットでライブ配信も行われます。病院で働いている皆さんの声を直接聴ける貴重な機会ですので、遠方の方も是非ご視聴いただくことをお勧めします。

日時:2022年10月10日(月・祝)13時〜16時30分

会場:大和ハウスグループみらい価値共創センター「コトクリエ」(奈良市西九条町4丁目1−1)

申込先:奈良県立医科大学人事課障害者雇用推進係 TEL 0744-22-3051(内線2140)

案内文  チラシ表  チラシ裏

水戸赤十字病院(茨城県水戸市)で5月に開催された障害者雇用研修会に続き、第2回目の障害者雇用研修会が令和4年9月16日に同院で開催されました。研修会では、国立がん研究センター東病院ジョブコーチの小泉聡子さんから「国立がん研究センター東病院での障害者雇用の取り組み」について発表があった後、医療機関の障害者雇用ネットワーク代表の依田から「障害のあるスタッフと病院内ジョブコーチの確保方法」について補足説明を行い、その後に茨城障害者職業センター職業カウンセラーの熊田真弓さんから「茨城障害者職業センターが行う支援サービスについて」説明がありました。国立がん研究センター東病院では、オフィスオークという障害者雇用のチームに障害のあるスタッフ16名と専任のジョブコーチ2名(9月から3名)が所属しています。説明資料には、具体的な業務が写真入りで詳しく紹介されているほか、院内での新規業務の切り出し方、実習による適性の把握方法、障害のあるスタッフとの接し方・支援、困りごとやトラブルへの対応など、現場で障害のあるスタッフと働くジョブコーチならではの説明があり、これから障害者雇用を進めようと考えている病院には大変参考になるものでした。茨城障害者職業センターからは、病院が利用できる支援サービスについての説明があり、職業センターからのジョブコーチ派遣、企業在籍型ジョブコーチの研修、うつ病などによる休職からの職場復帰に向けたリワーク支援などの説明がありました。講演後の質疑応答では、看護部門、検査部門、リハビリ部門、事務部門などから多くの質問があり、障害者雇用を自分たちの問題として考えていこうとする意識が感じられました。

(資料)

「国立がん研究センター東病院での障害者雇用の取り組み」

「障害のあるスタッフと病院内ジョブコーチの確保方法」

「茨城障害者職業センターが行う支援サービスについて」