医療機関に通院・入院されている患者の中には、その抱える疾病や障害ゆえに、一般の企業等での就労(一般就労)に困難を伴う方がいます。医療機関は治療を本業とするものであり、就労支援は医療機関の本来の機能ではありませんが、地域にハローワーク以外の就労支援機関がほとんどない時代には、特に精神科の領域では医療機関が治療の一環として就労支援に取り組んできた歴史があります。その後、労働施策や福祉施策が進展する中で、障害者の就労を支援する機関が数多く地域に整備されてきました。このため、医療機関としては地域の就労支援機関と連携することによって、一般就労を希望する患者の思いに応えていくことも可能となってきました。このように地域の中で役割分担が進んできたわけですが、一方で、医療機関が自ら又は同一法人で労働施策や福祉施策を活用し、治療スタッフと就労支援スタッフが密接に連携して就労支援に取り組んでいるケースも僅かですが存在します。継続的に治療が伴う精神障害者の就労支援では、医療スタッフと就労支援スタッフの連携をどう確保するかが課題となっており、それに応える試みの一つとして、地域での面的な就労支援体制の整備を前提としたうえで、こうした医療機関による一般就労の支援の取り組みが今後どう展開していくか、注意深く見守っていく必要があるでしょう。
ここでは、精神科の医療機関を中心に医療機関が就労支援に取り組むことの意義について整理するとともに、医療機関が自ら又は同一法人で労働施策や福祉施策を活用して就労支援に取り組む際に活用できる制度や課題、先行事例等について紹介します。