第41話 後輩に伝えたい「働くことの喜び」

福岡市にある特定医療法人財団が運営する博愛会病院では、特別支援学校からもインターンシップを経て職員を採用しています。この病院では昨年、卒業生である職員の協力を得て、特別支援学校の後輩向けにビデオメッセージを作成して学校に届けました。作成にあたっては、ジョブコーチから一人ひとりに対して、「今後仕事をしたいという学生に向けて動画を作成しています。仕事を通してどんなときにどんなことを言われて嬉しかったですか。例えば、お部屋の掃除をした時に患者さんにありがとうと言われて嬉しかったことなどです」と説明したそうです。文字で回答された文章を入れて完成したビデオメッセージには、卒業生の働く思いが込められています。

○ ゴミ回収をしているとき 患者さんからの「ありがとう」 その言葉と その笑顔が 何より励みになります。

○ 「助かっています」「綺麗にしてくれてありがとう」「シーツ交換がとても上手よ」 すごく嬉しかったです。

○ 休み明けでドライヤーのお手伝いをしている時「いつもあなたにしてもらっているから、やっぱりあなたがいいわ」。職員の方から「助かってるよ! 」「ありがとう」。そんな言葉をもらうと嬉しくて また頑張れそうです。

○ 「休んでいる間さみしかったよ」と言っていただきました。嬉しかったです。

○ ミスをして 何度も挑戦して今は  良かったと思います。仕事を覚えることで 安全に仕事ができる自分に 成長を感じています。

○ 皆さんの笑顔を見られるところがあって その時に一緒に笑い合えることが  すごく幸せな気持ちになります。

○ 困ったとき周りに相談を聞いてくれる人がいて 嬉しかった。

○ いつもきれいに洗ってくれて「ありがとう」や「助かるよ」と言われると 仕事が楽しくてたまりません。

○ 他の働き先が良いか 悪いか わかりません。 ただ 私は この仕事を選んで良かったとおもいます。 色々悩みだったり 思うことはあるかもしれません。ただ 私にはみなさんのはいりょがあり 働きやすいですし ありがたいです。これからも自分らしく 働き続けていきます。

ビデオメッセージの最後には、「この仕事を選んでもらい この職場を選んでいただき ありがとうございます。共に働ける今に 心から感謝しています」という博愛会職員一同からのメッセージが表示されています。

このビデオメッセージには、一人ひとりの働くことへの喜びが素直に表現されています。その理由としては、病院や施設の業務の中から、患者さんや他の職員に「有難う」「助かるよ」と喜んでもらえるような業務を切り出していることがあるかと思います。加えて、ジョブコーチとの日頃の信頼関係が構築されていることや、職場全体として個人の能力を活かすことを意識していることも大きいでしょう。

ビデオメッセージを作成した趣旨について、障害者雇用推進室長は次のように説明してくれました。「社会に出て働こうと思う学生に対し、働く上での障害はなんだろう?と考えた時に“不安”という言葉が頭に浮かびました。不安の払拭のためには、知ることが必要と思い、職員の生の声を伝えようという考えに至りました。仕事を通して大変だったこと、辛かったこと、苦労したことをありのままに紙面の質問用紙に書いていただきました。また、仕事を通して嬉しかったことの回答を求めました。全て含めて“知る”ことで、歩きだす第一歩になればという思いから動画を作成しました。就職に関わらず、障害の有無に関わらず、不安の払拭は大切にしています。気持ちよく、前を向き進み続けること、時に悲しく後悔や忍耐がありますが、反省はしても後悔のない人生を送れるように」

法定雇用率の引き上げや除外率の縮小を背景にして、障害者の採用は今後厳しさを増していくことが予想されますが、このような職場であれば、特別支援学校の先生方も安心して大事な生徒を送り出すことができるのではないでしょうか。