「精神科医療機関とハローワークの連携モデル事業」の地域での活かし方

精神科医療機関では、一般就労を希望する患者に対して、デイケアでどのような支援を行うことが効果的か、日頃から種々工夫されていることと思います。今回の連携モデル事業を活用し、ハローワークの職員が一般就労に当たっての心構えや求職登録の仕方等をデイケアのプログラムで直接伝えることは、一般就労に向けた動機付けを図る上でも効果的でしょう。

医療機関にとってもう一つ大切なことは、一般就労を希望する患者に対し、精神科デイケアから一般就労に移行していく流れを示すことでしょう。この10年ほどの間に、地域の中に就労移行支援事業所や就労継続支援事業所といった福祉系事業所が数多く設立されてきましたが、どの事業所が一般就労に繋げる力量や実績を有しているのか、患者の側も医療機関の側も十分な情報を持たないため、後になって後悔することも少なからずあると聞きます。このことは、地域の中で医療機関から一般就労に繋げる流れが明確になっていないことを意味します。

今回のモデル事業においては、精神科医療機関とハローワークの関係を強化するだけでなく、地域障害者職業センター(都道府県全域をカバー)や障害者就業・生活支援センター(概ね2次医療圏程度をカバー)といった公的な障害者の就業支援機関との連携を深めることが大切です。公的な就業支援機関は様々な事業所の利用者の支援に関わっており、地域にある就労移行支援事業所等の中で、どの事業所が一般就労に繋げる力量や実績を有しているかを把握している場合が多いからです。モデル事業を通じて、精神科医療機関とハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、一般就労に繋げる力量と実績のある就労移行支援事業所が「顔の見える関係」で連携していけば、地域の中に一般就労に向けた明確な流れが生まれてくることでしょう。

こうした一般就労に向けた関係機関の連携においては、他機関が支援することで医療機関による支援が切れてしまうのではなく、うまくいかなかった時に戻れる安心感も残して一般就労にチャレンジできるよう、デイケアの利用を継続し、就職後も引き続き、週末のデイケアや平日のナイトケアを活用して、一般就労者向けのプログラムを提供していくことも効果的でしょう。