残業の多い職場から業務を切り出す

障害のあるスタッフがチームで働いている病院では、スタッフが仕事に慣れて作業のスピードが速くなるにつれて、仕事の空き時間が増えてきます。そうなると、院内から新たな業務を切り出す必要が生じてきます。チームで働くスタッフの所属は人事部門としている病院が多いようですが、このことは院内から新たな業務を切り出す際にはとても有利に働きます。

関東地方にある急性期の公的病院では、障害のあるスタッフのチームは人事課に設置されているため、チームへの仕事の発注も人事課から院内各部門に働きかけています。院内に広く仕事の発注を呼びかけるだけだと、スポット的な作業の依頼はあっても、恒常的な作業の発注はなかなか出てきません。業務の切り出しや作業工程の明確化など、一定の準備作業が必要なことが面倒に思われるからです。この病院では、院内から仕事の依頼が来るのを待つだけではなく、積極的に特定の部門に働きかけていくことにしています。その際に参考にしているのが、部門ごとの職員の残業状況です。人事課では職員の残業状況が把握できるため、残業が多い部門に対して、障害のあるスタッフにできる仕事を切り出すことで、職員の残業時間の削減を行うよう提案しています。この病院では、スタッフが現場に出向いて行う仕事では、人事部門の担当者が付いていくのではなく、現場の職員が指導や見守りを行うことを前提にしています。人事部門の担当者の役割は、各スタッフの障害特性を現場の職員に伝え、安全かつ正確な作業が行えるようアドバイスすることです。こうしたことを通じて、作業工程が明確となり、業務全体の効率化が進み、残業時間も減少するという、病院全体として好ましい結果が得られているそうです。