新着情報

ハローワークは、職業安定行政の第一線の行政機関として、全国に540を超える機関が存在しており、管内企業からの求人受理、企業への雇用率達成指導、障害者の窓口相談等を実施しています。障害者雇用に向けた地域のネットワークの中心であり、豊富な求人情報を保有しています。

また、ハローワークの窓口には障害者雇用等の専門の部門が設置されており、就職支援ナビゲーター、就職支援コーディネーター、精神障害者雇用トータールサポーター等の専門的知識や経験を有するスタッフが配置されています。

このため、医療機関として障害者等の就労支援を効果的に進める上では、これらのスタッフとの情報交換等を通じて、一般就労の支援に向けて活用できる制度や考え方を習得していくことも効果的でしょう。

その際、精神障害者雇用トータルサポーターや就職支援ナビゲーターとして、医療機関に所属する精神保健福祉士等の職員が協力していくことも、ハローワークとのつながりを深める一つのきっかけとなる可能性があります。

 

(1)「精神科医療機関とハローワークの連携モデル事業」(平成28年度~)

(2)「医療機関と連携した精神障害者の就労支援モデル事業」(平成25年度~)

(3)「福祉、教育、医療から雇用への移行支援事業」

(4)「長期にわたる治療等が必要な疾病をもつ求職者に対する就職支援事業」

(5)精神障害者雇用トータルサポーター

 

労働施策のうち、医療機関を運営する法人等が就労支援機能を強化する上で活用しているものとしては、「ジョブコーチ支援」と「障害者就業・生活支援センター」があります。このほか、地域障害者職業センターの行う「リワーク支援」等の事業や職場復帰等に際して企業が利用できる助成金等もあるので、情報を集めておくと良いでしょう。

(1)ジョブコーチ支援(訪問型)

(2)障害者就業・生活支援センター

(3)地域障害者職業センターのリワーク支援

(4)職場復帰支援に係る助成金

事故や難病の発症等による中途障害等により、長期の休暇を余儀なくされた在職中の方に対して、職場復帰のために必要な職場適用の措置を実施した事業主に対して、「障害者職場復帰支援助成金」を支給する制度があります。支給額は、中小企業72万円、大企業54万円で、1年間を対象に6か月ごとに区分した支給対象期間ごとに、その期間に支払われた賃金額を上限として助成されます。ほかにも企業が利用できて、職場復帰に活用できる助成金がありますので、厚生労働省のホームページの「雇用関係助成金のご案内」を参照されると良いでしょう。

(参考)

障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース) (リンク)

障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)のご案内(リンク)

事業主の方のための雇用関係助成金(リンク)

初回の休職の場合には、医療機関の外来やリワークプログラムで復職できるケースも多いようですが、休職を繰り返す場合などは、医療機関のリワークのほか各都道府県にある地域障害者職業センターが実施するリワーク支援を活用すると効果的です。リワーク支援の利用は、在職中の者に限られ、支援開始にあたっては雇用事業主、支援対象者、主治医の三者の同意を必要としています。利用に際しては、精神障害者保健福祉手帳等を取得していることは条件とされていません。リワーク支援の支援期間は3~4か月程度で、復職先の職務及び環境への対応やストレス対応等の適応力の向上に向けた支援が行われています。地域障害者職業センターでは企業側への支援も充実しているため、休職を繰り返すようなケースで企業側での環境整備が不可欠な場合には、医療機関から患者に対しリワーク支援を紹介することも効果的でしょう。

(参考1)うつ病などで休職しており、職場復帰をお考えの方に(リンク)

(参考2)職場復帰支援(リワーク支援)~利用者の声~(リンク)

 

(参考3)地域障害者職業センターの概要

(参考4)地域障害者職業センター一覧

「障害者就業・生活支援センター」は、障害者の身近な地域において、雇用、保健福祉、教育等の関係機関の連携拠点として、就業面及び生活面における一体的な相談支援を実施するもので、全国に332センター(平成29年4月3日現在)が設置されています。このうち、医療機関を運営する医療法人や公益財団法人、一般財団法人が設置主体のものが11センターあり、ほかにも医療機関を運営する医療法人等を母体に設立された社会福祉法人が設置主体の障害者就業・生活支援センターもあります。

障害者就業・生活支援センターでは、精神障害者の就労支援に当たっての医療機関との連携の難しさが課題として指摘されており、同一法人や関連法人に医療機関があることで、こうした課題への対応がどこまで可能かが問われています。

国の事業である障害者就業・生活支援センターは、既に全国的な整備が進んでいるため、新たに整備される余地は少ないですが、一方で、都道府県や政令市の単独事業として、「障害者就業・生活支援センター」に類似した機能を有するセンターの整備を進めている地域もあります。

 

(参考)

障害者就業・生活支援センターの概要

障害者就業・生活支援センター一覧(平成29年4月3日現在332ンター)(リンク)

 

職場適応援助者(ジョブコーチ)支援は、職場にジョブコーチが出向いて、障害特性を踏まえた直接的で専門的な支援を行い、障害者の職場適応、定着を図ることを目的としています。ジョブコーチ支援には、①地域障害者職業センターに配置されたジョブコーチが企業等に訪問して行う支援(配置型)、②社会福祉法人等に配置されたジョブコーチが企業等に訪問して行う支援(訪問型)、③企業に配置されたジョブコーチが当該企業において行う支援(企業在籍型)の3タイプがあります。このうち②の「訪問型」については、平成27年度から対象法人の認定要件が緩和され、医療法人でも活用しやすくなりました。

これにより、デイケア利用者のうち一般就労を希望する者について、デイケアでは制度上制約が多かった職場実習(2か月以内に雇い入れられることが確実な場合に限られます。)等の施設外活動や就職後の職場訪問等の定着支援活動についても、訪問型ジョブコーチ支援を活用することで対応できる可能性が広がりました。

訪問型ジョブコーチ支援に従事する者は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の実施する訪問型職場適応援助者養成研修又は厚生労働大臣が定める研修を修了した者であって、必要な相当程度の経験及び能力を有する者とされています。なお、訪問型職場適応援助者養成研修の受講料を事業主がすべて負担し、かつ、養成研修の終了後6か月以内に初めての支援を実施した場合は、受講料の半分が事業主に対して助成されます。

訪問型ジョブコーチ支援の活動は、訪問型職場適応援助促進助成金の支給対象となりますので、窓口となる都道府県労働局に事前に確認してください。個別の支援については、地域障害者職業センターの作成又は承認する支援計画に基づいて行うことが必要です。助成金額は、支援計画に基づく支援日数1日当たり16,000円(移動時間を含む支援時間が4時間未満の日は8,000円)となっています。

なお、都道府県や政令市等の単独事業として、国の「ジョブコーチ支援」と同様の事業を実施している例もあります。

 

(参考)ジョブコーチ養成研修機関

現在、職場適応援助者(ジョブコーチ)養成研修については、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構のほか、厚生労働大臣が定める研修を行う民間の研修機関において実施されています。研修の詳細については、各研修機関にお問い合わせください。

【独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構】

・訪問型職場適応援助者養成研修 (リンク)

【厚生労働大臣が定める研修を行う民間の研修機関】

・NPO法人ジョブコーチ・ネットワーク

・NPO法人大阪障害者雇用支援ネットワーク

・NPO法人くらしえん・しごとえん

・NPO法人全国就業支援ネットワーク

・NPO法人なよろ地方職親会

・社会福祉法人南高愛隣会

障害者総合支援法に基づき提供される就労支援サービスには、「就労移行支援事業」、「就労継続支援事業(A型)」及び「就労継続支援事業(B型)」の3つがあります。これらの事業を行う施設には、複数の事業を同じ施設で行う多機能型もあります。いずれの事業も、医療機関を経営する医療法人等でも実施できるため、これらの事業を行う施設を医療機関に併設したり、医療機関の近くに開設することにより、治療と就労支援を密接に連携して提供できる可能性があります。利用者は当該医療機関の患者に限られず、広く地域の障害者が対象となりますが、運営主体が精神科の医療機関を経営している施設では、精神障害を有する利用者が多くなる傾向にあります。

一般就労に最も近い立ち位置にあるのは「就労移行支援事業」であり、デイケア等から一般就労へとつなげる機能が期待されていますが、一般就労への移行実績は事業所により相当の格差があります。このため、一般就労を希望する患者に対して、デイケアの出口として紹介する先として、地域にある就労移行支援事業所の中でどこが適切か、送り出す医療機関の側でも、しっかり見定めておくことが必要でしょう。この点に関連して、障害者総合支援法の改正により、新たに「障害福祉サービス等の情報公表制度」が創設される(平成30年4月施行)ことが注目されます。同様の仕組みは、既に介護保険で導入されていますが、障害福祉サービスの施設・事業者に対して、サービス内容等を都道府県知事へ報告させるとともに、都道府県知事は報告された内容を公表するという仕組みです。就労移行支援事業については、一般就労への移行実績も公表対象になるでしょうから、利用者だけでなく医療機関の側でも、一般就労への道筋を描きやすくなると思われます。

(参考)障害福祉サービス等の情報公表制度の創設(平成30年4月~)

 

(1)就労移行支援事業

「就労移行支援事業」は、一般企業等への就労を希望する障害者(通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者)を対象に、①就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、②求職活動に関する支援、③職場開拓、④職場への定着支援を行うもので、利用期間は2年とされています。一般就労を希望するデイケア等の利用者に対しては、できるだけ早く就労移行支援事業に移行させ、職場実習、就職支援を行うとともに、採用後の定着支援を行うことが望まれます。就職後には平日のナイトケアや休日のデイケアを医療機関の側で担うなど、就労移行支援事業の定着支援活動との密接な連携により、安定的な就労を実現させている例もあります。

一般就労への移行実績が施設間で相当格差があるほか、定着支援の取り組みが必ずしも十分でないといった指摘もあったことから、就職後の職場定着率に応じた給付費の加算制度が設けられています。更に、障害者総合支援法の改正により、一般就労に移行した者の就労に伴う生活面の支援を行う「就労定着支援」サービスが創設され、これらを活用して職場定着の支援の充実が期待されています。

 

(2)就労継続支援事業(A型)

「就労継続支援事業(A型)」は、一般企業等での就労が困難な障害者(通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が可能である者)に対して、雇用契約を締結して就労の機会を提供し、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うものです。雇用の形態はとっていますが、自立支援給付が支給されたり、利用料負担を求めるなどの点で、通常の一般就労とは異なります。利用者の中には、一般就労に移行できる者も相当存在しているとの指摘もあり、利用者の状況を適切に把握し、一般就労に移行できる者については、地域の就労支援機関と連携して一般就労に結び付けていくことが求められています。

 

(3)就労継続支援事業(B型)

「就労継続支援事業(B型)」は、一般企業等での就労が困難な障害者(通常の事業所に雇用されることが困難であり、雇用契約に基づく就労が困難である者)に対して、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援を行うものです。本事業の利用者についても、一般就労に移行できる者も存在するとの指摘が一部の施設にあり、「就労継続支援事業(A型)」と同様、一般就労に移行できる者については、地域の就労支援機関と連携して一般就労に結び付けていくことが求められています。このほか、一般就労の継続が困難になった者の受け皿としての機能も期待されています。

精神科の医療機関では、医療保険制度の下に入院や外来の診療が提供されています。ある程度病状が安定してくると、就労や復職等を目指してデイケアやナイトケア、デイナイトケア、ショートケアに移行することが多いですが、主治医のいる医療機関でデイケア等を実施していない場合は、主治医とは別の医療機関のデイケア等が利用されることもあります。

 

(1)デイケア等

精神科デイケアでは、明確に一般就労への移行を目的としたプログラム を組み入れているところは少ないですが、一部の医療機関ではデイケア内に模擬会社を設け、実際の職場に近い環境下で作業を行うなど、実際の職場を意識したプログラムを実施しています。また、就労支援機関等の見学、職場実習、ハローワークの集団面接会の見学などの施設外活動、履歴書の書き方や採用面接指導、企業面接への同行などを、デイケアの一環として行っているところもあります。就職した者に対する支援としては、勤務終了後のナイトケアや日曜日のデイケアが活用されています。

 

(2)リワーク(復職支援)

うつ病等で休職中の者が復職に向けて取り組む場合、医療機関の外来のほか、デイケアや短時間のショートケアが利用される場合が多く、大都市部を中心にリワークに特化した精神科クリニックも増えてきました。

 

(参考)就労支援の診療報酬による評価

精神疾患のある方に対する就労支援に積極的に取り組んでいる医療機関からは、企業に出向いて行う人事担当者や産業保健スタッフとの調整等の活動が診療報酬で評価されるようになれば、医療機関の就労支援も推進するという意見が出されています。医療機関の行動は診療報酬に大きく左右されるため、診療報酬で就労支援を評価することは、現実に効果が期待される提案でしょう。一方、医療保険は限られた財源の奪い合いの側面もあり、診療報酬で就労支援を評価する財源をどこから持ってくるかという問題もあります。医療と介護の関係と同様、就労支援の財源は医療保険とは別に求めるべきという意見は、医療関係者の中からも出てくることが予想されます。また、診療報酬で評価されれば、就労支援を行う医療機関は増えるでしょうが、医療の枠組みの中で行われる就労支援について、職業リハビリテーションの観点から質の確保が担保できるかという意見もあります。就労支援に積極的に取り組む医療機関の負担を軽減する具体的な仕組み作りにおいては、医療機関と労働機関との連携を深める視点も求められるでしょう。

このように医療機関が行う就労支援を診療報酬で直接的に評価することは、現状ではハードルが高いと思われますが、一方で、就労支援を行う関係機関に対する情報提供については、現行の診療報酬制度の下でも就労移行支援事業所や就労継続支援事業所に対するものは「診療情報提供料(Ⅰ)」を請求できるため、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、都道府県等の単独事業の就労支援機関にも対象を拡げることは十分可能性があるでしょう。更に進んで、精神科訪問看護・指導の訪問先が「患家」以外にも広がれば、就労支援機関への同行や職場実習に向けた調整等も診療報酬で評価されることになりますが、通院できない重度な患者が対象という訪問看護・指導の前提を見直す問題であるだけに、十分な議論が必要でしょう。

当ネットワークメンバーが所属する国立がん研究センター中央病院では、他の医療機関で障害者雇用を進める参考としていただけるよう、新たに障害者雇用の現場の定例見学日を設けていただけることになりました。

対象は、障害者雇用を検討している医療機関ですが、当該医療機関をサポートされる障害者雇用の支援機関の同行も歓迎します。定例見学日は毎月第1金曜日とし、事前に連絡いただいた上で、具体的な見学スケジュールを決めていただきます。

申込先は、国立がん研究センター人事課:福田(03-3547-5201 内線2567)です。

国立がん研究センター中央病院で実施している障害者雇用の業務内容は下記の通りです。

○医療系の業務

点滴固定用テープのカット、内視鏡洗浄、シーツ交換、ラウンジ清掃、薬剤カートの搬送等

○事務系の業務

郵便物の仕分け・配達、郵便物の発送、事務部門間の書類回付、病棟・外来と総務課間の文書搬送、コピー用紙の配達、名刺印刷、身分証明用写真撮影、封筒への資料折込・封入、掲示資料等のラミネート加工、書類編纂、書類のPDF取り込み、シュレッダー処理、会議室の設営・清掃、宿舎管理人の休憩時の事務代行等)