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障害者を募集する際、基本となるのは、ハローワークに求人内容を正確に詳細に伝えるとともに、ハローワークから求職者情報、支援機関情報(評判)等を得るおとで、いわばハローワークを使いこなすことです。しかしながら、障害者雇用が「売り手市場」の現在では、ハローワークに求人表を提出して、後は適切な人材紹介を待つだけでは、必ずしも適切な人材が得られない場合もあります。

地域によって多少事情は異なりますが、ハローワーク以外の主な人材確保ルートは2つあります。第1のルートは、特別支援学校の在学生の現場実習を受けることで開拓されるルートです。学校では、社会に出て実際に企業で働く力をつけるために現場実習や就業体験を教育活動の中で計画し、卒業後の適切な進路選択ができるようにしています。実習を受け入れることにより、障害者雇用に向けた情報収集と体験ができるので、時間はかかりますが、比較的安定した人材開拓ルートとなります。法定雇用率が引き上げられる平成30年に向けて、今から準備を始める医療機関には、お勧めのルートです。

第2のルートは、地域の就業支援機関からの職場実習を受けることで開拓されるルートです。この10数年の間に、ハローワーク以外に障害者の就業支援機関が整備されてきたことで、事業者が安心して雇用できる環境が地域の中に整ってきました。障害者の就業支援機関としては、都道府県単位で設置されている障害者職業センターのほか、国の制度として2次医療圏単位で整備される障害者就業・生活支援センター(全国に325か所)、都道府県や政令市等の単独事業で設置されている障害者の就業支援機関等があります。これらの支援機関に登録されている障害者の中から、医療機関で切出した業務に従事できそうな者を捜してもらいます。各センターは就労移行支援事業所等との連携もあるので、それらの施設の利用者の中からも適切な人材を見出してくれるでしょう。もし、就業支援機関の側で適切な人材がいて、(4)の職場実習を受け入れるようなら、その旨を予めハローワークに伝えて留意点等を相談しておくとよいでしょう。

ハローワーク以外の就業支援機関のルートは、採用後の定着支援の観点からも重要な意味を持っています。特に、知的障害や精神障害(発達障害を含む)のある方が働く上では、生活面の安定が必要です。仕事の面は職場で見るにしても、生活面まで雇用する側が気を配ることは難しく、適切でない場合もあります。障害者就業・生活支援センター等の就業支援機関は、家族との調整を含めた生活面の支援も担う機関なので、雇用する側との間で適切な役割分担が可能となります。最近では、民間の事業所でも、障害者を募集する際に地域の就業支援機関に登録されていることを条件にするところが増えています。

このほか、障害者能力開発施設でも、一定期間の訓練後に職場実習を踏まえて就職先の開拓が行われています。また、障害者福祉サービスの一類型としての就労移行支援事業所では、一般事業所での就労に向けて、訓練と職場の開拓、職場への定着支援等が行われますが、一般就労への移行率は施設によって相当の格差があるので確認が必要です。

従来、身体障害のある方しか雇用してこなかった病院も多いですが、今や知的障害や精神障害(発達障害を含む)も視野に入れた人材確保を考えないと、法定雇用率の達成は難しい状況です。そのためには、業務を再整理して、比較的単純な作業に整理する「業務の切り出し」が不可欠です。この過程では、業務の内容を詳細に把握する必要があるため、業務の効率化を進める契機となります。

これまで病院職員が日常的に行っていた業務の中から、単純化できる作業を切り出す上では、何より看護部門の協力が必要です。検討作業に看護部長等に加わってもらい、病棟や外来で看護師の業務負担を軽減するため、看護師でなくてもできる単純作業を切り出してもらい、それを障害のあるスタッフの仕事としていくことで、「職員に歓迎される障害者雇用」が実現できます。

まず仕事を決めて、その仕事ができる人を募集するのは、一般の職員の場合と同じですが、大切なことは、仕事を切り出す際に業務内容を分解して単純化することです。そのことにより、病院業務全体の効率化も進むという点を是非意識してください。

障害者雇用を本格的に進めることについて、トップダウンで話が下りてくる場合もあり、人事部門から幹部会に話を上げることもありますが、何より大切なことは、病院内で障害者雇用を本格的に進めることについて、共通認識に基づく確固たる意思決定がされることです。

その際に大切なのは、ハローワークからの指導(雇入計画策再命令、事業者名公表)という受け身の対応だけでなく、障害者雇用を機会に業務全体の効率化を図ることで「職員に歓迎される障害者雇用」が実現できることについて「納得感」を持つことです。そのためには、実際に障害者雇用が進んでいる医療機関の事例をモデルとすることが効果的です。当ホームページでも事例は紹介しますが、できれば実際に先行事例の医療機関を訪問して、看護部門や事務部門の職員から直接話を聞くことにより、イメージを実感することが何より大切だと思います。人事担当者に加え、少なくとも看護部長と事務部長は、先行事例を実際に見に行くことをお勧めします。

わが国では、障害者雇用促進法により、従業員の一定割合(令和3年3月1日から民間事業所は2.3%、地方公共団体や独立行政法人は2.6%)以上の障害者の雇用が法律上義務付けられています。この「法定雇用率」をクリアできるだけの障害者の雇用を進めることは、経営者として当然意識されるべきコンプライアンス問題です。

一方で「医療は国家資格の必要な仕事だ」「患者の安全が第一な職場にリスクを持ち込めない」といった意見もありますが、こうした特殊性を考慮した「除外率」(障害者の雇用が難しいと考えられる業種について、従業員の一定割合を予め控除した上で雇用率を計算する特例措置)により、医療機関には相当の緩和措置が講じられています。従って、その水準すら達成できないことには、社会的な理解が得られず、雇用率未達成事業所に対するハローワークの「雇入計画作成命令」や「事業者名公表」は、医療機関にも等しく適用されることになります。

障害者雇用を進めることには、様々な効果が期待されますが、結果として「法定雇用率」の達成というコンプライアンス問題を解決できる意義があります。

 

(参考1)障害者雇用率制度

(参考2)雇用率達成指導と企業名の公表

(参考3)法定雇用率の見通し

(参考4)職員の退職による法定雇用率割れ

(参考5)医療機関の雇用率は高い?

(参考6)医療機関に適用される除外率の縮小

 

医療機関は、疾病の予防、治療、リハビリテーション等を通じて、地域住民の健康水準の維持向上に貢献することを使命としています。しかしながら、懸命な治療行為が行われても、結果的に一定の障害が残る場合があることは避けられません。また、精神疾患等の治療を継続されながら生活のしづらさを抱えている方もいます。障害者雇用の対象となるのは、こうした医療サービスを現在受けていたり、過去に受けたことのある方々であって、医療機関にとって身近な存在であるといえます。障害者雇用を進めることは、医療機関に関わりのある方々に働く機会を提供することを通じて、地域社会に貢献することです。

加えて、医療機関での障害者雇用には、地域住民への啓発という面でも大きな意味があります。製造業のように働く現場が見えにくい環境とは異なり、医療機関には多くの地域住民が患者や家族の立場で出入りしています。そのような環境下で障害のあるスタッフが働いている姿を見てもらえば、障害があっても工夫すれば十分戦力になることを具体的なイメージで理解してもらうことができるでしょう。

エピソード:小児病棟から始めた理由

 

このネットワークは、ホームページを通じた情報発信を目的としており、基本的な情報はホームページでどなたも閲覧できます。

これに加え、ネットワークに参加登録された方は、参加メンバーの紹介ページで紹介するほか、メンバー間での意見交換への参加等が可能となります。

ネットワークに参加登録いただけるのは、以下のいずれかに該当し、医療機関での障害者雇用を進める思いを共有できる方です。特に、医療機関の方には積極的に参加いただくことを期待しています。

①医療機関の役職員

ア.「職員に歓迎される障害者雇用」を開拓した医療機関又はこれから開拓しようとする医療機関

イ.「一般就労の支援」に取り組む医療機関又はこれから取り組もうとする医療機関

②「職員に歓迎される障害者雇用」の実現に向けて医療機関を支援する公的な障害者就業支援機関及び特別支援学校の役職員

③障害者の雇用支援に関する行政機関の職員

④障害者雇用に関する高度な知識経験を有する者

 

ネットワークへの参加を希望される方は、「ログイン」画面の「新規ユーザー登録」から登録フォームに必要事項を記入して参加者申請を行ってください。申請内容を確認したうえで、パスワードを通知します。登録手続には若干の日数がかかる場合があります。

(注)「新規ユーザー登録」の登録フォームでは、システム上「利用規約に同意する」欄へのチェックが求められますが、当ネットワークには「利用規約」はありませんので、そのままチェックを入れてください。

 

医療機関の経営者・幹部・人事担当の皆さん。皆さんの所属する組織(法人等)では、障害者の法定雇用率は達成できているでしょうか。「達成できている」、「あと少しで達成できる」、「必要性は理解しているがどうすればよいか分からない」など、答えは様々かと思います。さすがに現在では「障害者を雇うことは医療機関の使命ではない」と無視される経営者は稀ですが、法定雇用率そのものに関心がなく、或る日突然、ハローワークから「障害者雇入計画作成命令」を発出すると言われて、慌てて現状を認識される経営者が多いのも事実です。

疾病の予防、治療、リハビリテーション等を通じて、地域住民の健康水準の維持向上に貢献するという医療機関の本来の使命を果たしながら、障害者雇用という産業種別を超えて事業主全体に課せられた法的義務を適切に果たす道はないのでしょうか。この問いに応えるヒントは、医療機関での障害者雇用の先進事例にあります。

現在は一部の医療機関にとどまりますが、障害者雇用を単なる数合わせだけのものにせず、障害者雇用に取り組む過程で病院内の業務の効率化を進めた結果、看護師等の国家資格のある職員が雑務から解放され、本来の仕事に専念できる効果が生じているところあります。このような病院を訪ねると、あちこちで障害者雇用のおかげで助かっていると評価する声を聴きます。ここでは、「職員に押し付けられた障害者雇用」ではなく、「職員に歓迎される障害者雇用」が実現できているのです。

「医療機関の障害者雇用ネットワーク」は、このような「職員に歓迎される障害者雇用」を開拓した医療機関と、それを支援する就業支援機関や特別支援学校、ハローワーク等の経験豊富な人材が参加し、自分たちの事例を他に役立ててもらう「志」で情報交換・発信するものです。

私たちは、「障害者雇用のノウハウは社会全体で共有すべきもの」と考えています。このネットワークを通じて、先進事例に学びながら自ら新たな事例を作り出し発信する医療機関が増え、他産業に比べて遅れている医療現場の障害者雇用が大きく前進することを願っています。

 

「医療機関の障害者雇用ネットワーク」

代表世話人  依田晶男

(参考)「医療機関の障害者雇用ネットワーク」趣意書

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