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国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成セミナーの大阪での令和6年度第1回目が、7月17日から4日間の予定でオンラインで開催されました。セミナーには、国の8機関から11名が参加されました。

令和元年度から東京と大阪の会場で開催されてきたセミナーは、今年度から職場実習以外の講義はオンラインで開催されることになりました。これにより遠方の受講者も参加しやすくなり、受講者の増加も期待されましたが、今回は従来並みの参加にとどまりました。障害者雇用を進めている国機関は全国に所在しているので、オンラインのメリットを活かして、今後は受講者の増加を期待したいところです。

オンラインの講義後の質疑の時間では、2名から質問がありました。支援機関を活用する際の個人情報やプライバシー確保に関する質問については、支援機関には守秘義務が課せられていることに加え、安定的な就労のためにも支援機関との情報共有が必要なことを本人に説明し、理解を得ることが大切なことを説明しました。

新たな障害者を雇用した職場で既に働いている障害者への対応に関する質問については、一般論として、先に雇用された障害者が十分な仕事を与えられず、働かなくても良いと考えてしまっている場合が問題になることを指摘しました。このような場合、後輩が一所懸命に働く姿を見て自分も頑張るようになる可能性もありますが、後輩の足を引っ張る言動をとるような場合には、同じ職場ではなく別の職場に配置した方が良いこと、現在の仕事が合っていない可能性もあるので、より能力を発揮できる仕事に変えることで、モチベーションが上がることもある旨を説明しました。

受講者との質疑をした印象としては、オンラインでも質問がしにくいという感じはしませんでした。一方で、受講者同士の交流という点では、対面のように休憩時間でのやりとりもないため、工夫が必要だと感じました。この点については、セミナー委託元の厚生労働省を含め、今後の改善に期待したいところです。

(講演資料)

「公的部門における職場適応支援者の役割①~働き方改革に資する障害者雇用の進め方~」「公的部門における職場適応支援者の役割②~公務部門での障害者雇用事例に学ぶ~」

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の運営する東京障害者職業センター多摩支所(東京都立川市)では、7月26日(金)午後に「医療機関における障害者雇用の勧め~成功のためのヒント~」をテーマとした講習会を医療機関を対象に開催することとなりました。当ネットワークの依田が「病院事例に学ぶ障害者雇用の進め方」について講演するとともに、講演後には医療機関の皆さんの意見交換の時間も設けられています。多摩地域の医療機関が中心とは思いますが、定員にも若干余裕があるようなので、これからの障害者雇用の進め方について情報を集めたい病院の皆さんには、有意義な場になるかと思いますので、ご案内させていただきます。

 

さいたま障害者就業サポート研究会(代表:朝日雅也 埼玉県立大学名誉教授)の第89回研究会が2024年6月24日にさいたま市民会館大宮(Rai Boc Hall)(埼玉県大宮市)で開催され、企業、医療機関、教育機関等から約60名の参加がありました。研究会ではネットワーク代表の依田が「除外率引き上げにどう向き合うか〜医療業と教育業を中心に〜」をテーマに1時間講演を行いました。

講演では、医療業や教育業などの「除外率対象業種」に焦点を当てました。「除外率対象業種」では法定雇用率の引き上げと除外率の引き下げのダブルパンチで、業種内に危機意識が高まっていること、「除外率対象業種」は業務の性質から国家資格等を有する専門職の割合が高く、専門職の生産性を高める「働き方改革」の観点でのタスクシフトの中で障害者雇用の新たな職域が生まれる可能性があることを指摘しました。

その上で、障害者雇用を働きかけるポイントとして、医療機関を例に取って、①医療機関の関心事を掴む、②専門職のためになることを伝える、③障害者が戦力になっている事例を紹介する、④同じ専門職からのメッセージを伝える、ことを説明しました。

講演後には、研究会代表の朝日さんと30分ほどのトークがありました。「定型的な業務」を切り出すことについて、仕事へのモチベーションが持てるかとの質問には、その仕事を片手間にしていた専門職よりも丁寧で綺麗な仕事ぶりで、専門職から感謝されている病院の例を紹介しました。どのような仕事でもプロと感じられることが大切で、「定型的な仕事」も決して「雑務」として軽視されるべきものではないでしょう。

会場参加者からは、病院現場で障害者に仕事を教える側の負担感について質問があり、仕事とのマッチングや教え方の工夫によって、指導する側の負担が大きく減ることを説明しました。病院にも障害者雇用代行ビジネスの営業があるようですが、負担感を考えて農場など医療と関係ない代行ビジネスに障害者雇用を委ねることは、せっかく専門職の業務負担を軽減できる機会を自ら失うものであり、大変もったいないことでしょう。

(講演資料)

「除外率引き上げにどう向き合うか〜医療業と教育業を中心に〜」

(参考)「ちょっと元気の出る話」(当ネットワークホームページから)

第24話「大切な仕事を「雑務」と呼ばないで」

第42話「私たちの仕事に名前をつけて」

 

 

東京都知的障害特別支援学校就業促進研究協議会(会長:髙橋馨 東京都立青鳥特別支援学校校長)では、都立知的障害特別支援学校高等部の卒業生を雇用する事業所を対象にしたwebアンケート調査を、令和6年1月~3月に実施しました。障害者雇用の環境向上や進路指導の充実を目的に行われた調査は、平成19年以来17年ぶりのもので、313社から回答がありました。アンケートに協力した事業所に対して速報値が報告されたので、協議会のご理解を得て概要を紹介させていただきます。

まず、「知的障害者が取り組んでいる業務内容」を見ると、「病院や介護施設等での補助作業」の件数は19位でしたが、「今後も残ると思われる知的障害者の業務内容」では9位となっています。DX化により消滅していく業務も予想される中で、「病院や介護施設等での補助作業」は今後も知的障害者に適した業務として職域拡大が考えられているようです。

次に、採用や卒業後の学校の関わりを見ると、大半の事業所が採用を検討する上で「現場実習」の有効性を認めており、安心して採用できる条件として9割近い事業所が「卒業後のアフターフォロー」をあげています。

業務に関する配慮としては、「複雑ではない業務の提供」「定期面談の実施」「指示を与える社員を決めている」「休憩時間に配慮」「生活支援機関との連携」「本人に分かりやすいマニュアル等の整備」が多くあがりました。

採用の際に重視する点としては、「分からないことを質問できる」「時間を守れる」「挨拶ができる」「指示したことを理解できる」「必要なことを報告できる」「一定時間業務に従事できる集中力」といった点があがりました。雇用継続に必要なこととして、8割前後の事業所が「就業意欲の継続」「安定した生活習慣」「報告や相談ができる」をあげています。知的障害や発達障害のある職員向けの研修では、「ビジネスマナー研修」や「会社全体を理解するための研修」が「業務スキルアップ研修」以上に多く行われています。

これらは業種に関わらず、広く知的障害者の雇用に共通するノウハウと言えるもので、医療機関で知的障害者の雇用を進める上でも大いに参考となりそうです。

最後に障害者雇用のメリットについて聞いた質問では、「企業の社会貢献」が8割と最も多かったものの、「障害のある社員が戦力になっている」という回答も7割以上の事業者からあり、人材不足の時代に知的障害者が職場の戦力となって活躍している姿が浮かび上がりました。

協議会では、今後、働く卒業生からのアンケートも含めて分析を進め、報告書にまとめる予定で、その活用が期待されます。

厚生労働省では、民営事業所における障害者の雇用の実態を把握し、今後の障害者の雇用施策の検討や立案に役立てることを目的に、5年ごとに「障害者雇用実態調査」を実施しています。令和5(2023)年6月に実施された調査結果について、令和6年3月27日に厚生労働省から発表されました。

調査は、常用労働者5人以上を雇用する民営事業所のうち、無作為に抽出した約9,400事業所が対象で、回収数は6,406事業所(回収率67.9%)でした。

以前の調査では、複数の種類の障害がある者については、いずれかの障害に寄せて計上していましたが、前回調査(平成30年度)からはそれぞれの障害に重複して計上しています。また、発達障害の扱いについても、以前は発達障害者のうち精神保健福祉手帳を有する者が精神障害者として計上されていましたが、前回調査からは「精神科医により、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害等の発達障害の診断を受けている者」は精神障害保健福祉手帳を有しない者でも発達障害者としてカウントされることになり、精神障害との重複障害の有無に関わらず、雇用の実態が把握されています。

【調査結果の概要】

○ 従業員規模5人以上の事業所に雇用されている障害者数は 110 万 7,000 人で、前
回調査に比べて 25万6,000人の増加(平成 30年度85万 1,000人)。内訳は、 身体障害者が52万6,000 人 (同42万3,000人) 、 知的障害者が27万 5,000人(同18万9,000 人) 、精神障害者が21万5,000人(同 20万人) 、発達障害者が9万1,000人(同3万 9,000人) 。

○ すべての障害種別で前回調査より平均勤続年数が増加。
・身体障害者 12年2月(前回は 10年2月)
・知的障害者 9年1月(同7年5月)
・精神障害者 5年3月(同3年2月)
・発達障害者 5年1月(同3年4月)

「令和5年度障害者雇用実態調査結果の概要」

「令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書」

当ネットワークメンバーで、熊本市にある特定医療法人佐藤会弓削病院に勤務されている精神保健福祉士・社会保険労務士の高森祐樹さんから、新たに立ち上げられた「精神保健雇用法学研究会」についてお知らせがありました。高森さんは弓削病院に勤務する傍ら、熊本大学大学院修士課程で労働法について研究されています。精神障害者の雇用が進む中で、障害者雇用促進法に基づく「合理的配慮」に関する裁判例も増えてくるかと思います。当ネットワークメンバーには、高森さんの他にも精神保健福祉士で社会保険労務士の資格を取得された方がいますが、これからはこうした専門職の活躍される機会も増えてくると思われます。

【高森さんからのお知らせ】

精神保健と雇用法学の融合を目指す、新しい形の研究会「精神保健雇用法学研究会」を開催しました。精神障害者の就労支援、雇用トラブル、支援関係者の課題共有など、精神保健と雇用に関する多様な諸課題を取り上げる研究会です。第1回の研究会は令和6年5月16日午後6時から開催し、「精神障害判明と退職勧奨の実態 中倉陸運事件・京都地裁令和5年3月9日判決を例に」をテーマにしました。研究会には、医師、臨床心理士、精神保健福祉士、弁護士、社会保険労務士、大学関係者、人事労務担当者、就労支援員など合計22名が参加され、医療・福祉・法学・企業などそれぞれの立場から熱い議論が交わされました。当日のレジュメをご希望の方は、下記のメールアドレスまでご一報いただければ幸いです。

y-takamori@srpsw.com

精神保健雇用法学研究会 代表世話人

社会保険労務士・精神保健福祉士 高森祐樹

熊本大学大学院修士課程在籍(労働法)

 

福岡市にある博愛会病院では、各職場で働くケアメイト(障害のあるスタッフ)をジョブコーチの仲西さんがサポートしています。ケアメイトの皆さんにとって「ジョブコーチ」とはどういう存在なのか聞いたところ、様々な答えが返ってきました。前回掲載したジョブコーチの視点での意見と合わせて、ジョブコーチとして働く上で何が必要かを考える参考になるので、紹介しておきます、

「一番身近にいて困った時に相談に乗ってくれる存在」

「困っていることについてどうすれば良いかアドバイスしてくれる」

「注意もいい意味でしてくれる」

「具体的に言ってくれるので分かりやすい」

「上司ではなくフランクな感じなので話しやすい」

「担任の先生みたいな感じ」

「難しい度を人に合わせて仕事を振ってくれる」

「自分に合ったスケジュールを組んでくれるので動きやすい」

「職員とは他の業務もあるので少ししか話せないが、ジョブコーチは時間をかけて聞いてくれて、具体的に最後まで話してくれる」

「職員に話が伝わらない時にも、間に入って話を伝えてくれる」

「職員との仲介役、真ん中に立つ人」

「いないといけない存在、いないと気分が落ち込む」

文書でコメントをくれたケアメイトもいました。

「ジョブコーチのいる職場は、その人の苦手な所を理解して改善するため共に考えたりその人に合った仕事を与える。仕事の中では中々相談しづらいことも沢山あるが、ジョブコーチがいれば話を聞いて自分では解決できないことも間に入っていただくことで、問題解決への近道にもなる。簡単にいえば障害をもった人にてきした相談員」

「ジョブコーチが会社に1人いてくれると働きたい人が働きやすくなるので、そういう世の中になってほしい。いろんな場所や職種を選べるようになったらいい」

ケアメイトの皆さんの願いに応えられるようなジョブコーチが増えていくことを期待したいですね。

障害者雇用を積極的に進めている病院では、職制上の上司とは別に障害者の雇用支援者を職場に配置している場合があります。院内での呼称は様々ですが、一般的には「ジョブコーチ」と呼ばれることが多いです。

 ジョブコーチとして病院で活躍されている皆さんに、ジョブコーチとして働く上で大切にしていることをお聞きしました。そこからは、以下のようなことがジョブコーチの適性として浮かび上がってきます。

 ○ 急かすのではなく、待つことができること

 ○ 頭ごなしでなく、相手のことを理解しようとすること

 ○ 相手に即して分かりやすく説明しようとすること

 ○ 相手の成長を信じ、職業人としての成長を共に喜べること

 ○ ちょっとした変化にも関心を持つことができること

 ○ 独りよがりにならず、他の職員や関係機関の意見を聞いたり、力を借りることができること

 ジョブコーチを病院内から登用したり、外部から新たに採用する場合にも、こうした適性を備えた人材を選ぶようにすれば、障害のあるスタッフの雇用も安定することでしょう。

2023年5月29日にオンラインで開催された「障害のある人の欠格条項って何だろうQ&A」 出版記念イベントについては、昨年6月に講演部分の映像を紹介させていただきました。
今回、その映像の発言記録が公開されましたので、併せてご紹介させていただきます。
今回公開されたのは、視覚障害のある福場将太医師と聴覚障害のある関口麻理子医師の動画での発言内容です。お二人の医師になるまでの経緯と医師としての取組みなどが紹介されています。

ジグ活用事例ライブラリー」では、障害のあるスタッフが作業を円滑・正確に行えるように、医療現場で工夫された様々な作業補助具(ジグ)を紹介しています。

今回、新たにライブラリーに「窓開き封筒への封入文書折り作業」が追加されました。東京医科歯科大学病院で窓開き封筒に三つ折りの文書を送付する際に、クリアケースを使ったジグを活用することで、窓から住所と宛先が見れるように工夫されたものです。窓開き封筒を使われていて文書の折り方に苦労されている医療機関では、とても参考になる実践例でしょう。

窓開き封筒への封入文書折り作業