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独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)が実施している、日本看護協会の認定看護管理者教育課程サードレベルの研修が開講され、JCHO病院18病院のほか大学病院、公立病院、民間病院7病院から計25名が受講しました。昨年はコロナウイルス感染症の影響で中止になりましたが、今年はオンラインと対面を組み合わせて実施されることになり、「組織デザインと組織経営」の単元では、「働き方改革に資する障害者雇用」を素材に3時間の講義がオンラインで行われました。
講義の前半では、看護管理者として持つべき視座として、経営者の間で関心が高まっている「健康経営」と、SDGsにも関連する「多様性」について取り上げるとともに、その理解を深めるために、医療現場における障害者雇用の意義、障害者雇用の課題、障害者雇用の業務について、具体的な事例を含めて説明しました。
講義の後半ではグループワークを行い、(1)「働き方改革に資する障害者雇用」を自院で進めるならどのような業務を切り出すか、(2)自閉症スペクトラム(ASD)傾向のある看護職の適性に合う仕事は何か、の2つのテーマで話し合ってもらいました。
(1)のテーマでは、具体的な業務例の提案とともに、定型的な業務なら看護部にも豊富にある、看護職の負担が軽減される業務を職員アンケートで聞いてみてはどうか、といった意見が出ました。このほか、障害者雇用の支援者として、看護師長の定年再雇用者が登用されている事例について、複数の病院から報告されました。
(2)のテーマでは、定型的な補助業務ならできるものの、看護職として自己肯定感を持てるようにすることが必要、本人だけでなく周囲の看護職にも納得してもらえるような説明が必要といった意見が出ました。その上で、専門性が活かされ自己肯定感が持てる職場として、手術室、アンギオ室、内視鏡室などが提案され、実際にそのような職場に配属して長く安定して働いている事例も報告されました。このほか、細部のチェックが得意という特性を活かし、看護記録のチェックや投薬ミスの防止などを行う看護部長直属のスタッフとして活用するなど、新たな発想の提案もありました。このテーマは、看護管理者として直面することが多いだけに、受講生の皆さんも熱心に義論されていたのが印象的でした。
講義を通じて「職員の能力を活かした多様性のある組織文化」に関心をもち、その実践に取り組む看護管理者が増えていくきっかけになることを期待しています。

障害のある人の中には、一度に複数のことを言われたり、口頭だけの説明だと理解できない人がいます。特に、精神障害、発達障害、知的障害については、こうした傾向のある人が多いようです。「何度言ってもできない」と、障害のある人の側に問題があるように言われている場合も、実は指示の仕方に問題がある場合が少なくありません。

初めて行う仕事を分かりやすく説明するためには、作業工程を細かく分解して、一つ一つの作業を文書だけでなく、図や写真も使って説明する作業マニュアルがあると効果的です。

東京都内の公立病院では、特別支援学校の生徒のインターンシップを受け入れるに当たり、障害のある職員に「やってもらうと助かる業務」を薬剤部門や検査部門で洗い出し、その業務について技師長自ら図や写真入りの作業マニュアルを作成しました。

部門のトップがマニュアルを作るなど前向きな姿勢で取り組むので、部下職員も自ずから受け入れに協力的になれたようです。こういう病院なら、インターンシップを行う学校や生徒からも選ばれ、人材の確保も容易になることでしょう。

国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成セミナーの大阪での令和4年度第1回目が、7月20日からドーンセンター(大阪市)で開催されました。セミナーには、国の機関から12名の方が参加されました。4年前から国機関職員を対象に計15回開催されてきたこのセミナーですが、これまでは東京と大阪の会場で開催されてきたため、宿泊の必要がない近県にある国機関の職員の受講が中心となり、それ以外の地域にある国機関からの受講は極めて少ない状況です。今回のセミナーでは、たまたま沖縄からの参加者がありましたが、今後は、こうしたセミナーを東京や大阪以外でも国機関が多い地域では開催し、各地にある国機関の職員が容易に参加できるようにしていく必要があるでしょう。

そのように各地の会場で研修会を開催する場合にも、中央の講師による講義はzoom録画を活用し、現地の講師による講義は対面で行うとともに、企業実習については現地の企業で行うような形にすれば、無理なく各地で開催できると思われます。国機関における障害者雇用の質を向上させるためにも、こうした研修が各地で開催されることを期待します。

(講演資料)「公的部門における職場適応支援者の役割①②」

都内にある公立病院では、特別支援学校の生徒のインターンシップを初めて受け入れました。インターンシップでは、病院内の様々な作業を経験してもらうため、医療部門や事務部門から様々な作業が切り出されました。その上で、実習生が作業を行いやすいよう、各部門の実習担当者が作業手順等を写真入りで分かりやすく示す「作業マニュアル」を作成しました。

こうした病院側の事前準備もあってインターンシップの希望者は多くなり、2回に分けて行われました。最初のグループの実習が始まり、外来の待合の椅子を除菌シートで拭く作業については、看護部が作成した作業マニュアルに沿って、順調に作業が行われました。

実習生の作業を傍らで見守っていた実習担当者は、実習作業が終了したタイミングで、マニュアルの内容をより良いものにするにはどうすると良いか、実習生一人一人に意見を求めました。この問いかけに対して、実習生からは、除菌シートを引き出す際にキャスター付きのカートが動いてしまうので、予めキャスターのストッパーかけることにしてはどうか、という具体的な提案がありました。

この提案は取り入れられ、改良された作業マニュアルは、次のグループの実習生に使われることになりました。

マニュアルを実際に使う立場の実習生から意見を求め、共同作業で内容を改善していくことは、障害者雇用の現場ではとても大切なことです。こうした病院側の姿勢があれば、障害のあるスタッフが能力を発揮し、定着率の高い障害者雇用が実現できることでしょう。

国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成セミナーの東京での令和4年度第1回目が、7月11日からAP市ヶ谷(東京都千代田区)で開催されました。セミナーには、国の機関から12名の方が参加されました。令和元年度からスタートしたこのセミナーも4年目を迎えています。この間に中央官庁から多くの国家公務員が受講され、研修の成果を現場に持ち帰っていかれましたが、中央官庁では2〜3年で人事異動があるため、こうした研修は継続して行われる必要があります。今回の受講者には、以前のポストでも障害のある職員が同じ職場にいたという人も多く、中央官庁でも障害者雇用が身近な存在となってきていることが伺えます。そのような状況の中で研修に臨むため、障害者雇用についてもっと知りたいという思いも強く感じます。組織としての障害者雇用の経験が長くなるほどに、受講者の問題意識も明確になってきているので、研修で持ち帰ることができる情報やノウハウも多くなることが期待されます。セミナーは、講義から学ぶこと以外にも、他省庁の皆さんが率直に悩みや工夫を話し合う機会にもなっているようです。こうしたネットワークが研修後にも継続されれば、公務部門の障害者雇用の質も高まるのではないでしょうか。

(講演資料)「公的部門における職場適応支援者の役割①②」

都道府県虚育委員会の障害者雇用のタイプは、大別すると「一般就労に向けて期間限定で訓練するチャレンジ雇用タイプ」と「働き方改革に資する期間制限のない安定雇用タイプ」の2タイプがあります。

教育委員会は組織内に特別支援学校があり、特別支援学校では卒業生の進路として一般就労での就職も目指していますが、卒業時点では一般就労できない生徒がいるのも事実です。このような者を卒業後に期間限定で雇用し、働くことを通じて一般就労できるだけの力を身につけさせていく方法としての障害者雇用は、教育委員会の役割の延長線で考えやすいもののようです。一般就労に向けて働く力を育てるためには、体力をつける取り組みや、ソーシャルスキルを身につける指導にも、積極的に取り組む必要があるでしょう。一方で、仕事は訓練のための素材という意味合いが強くなり、仕事のスピードや出来栄えはあまり期待できない面があります。1年〜2年で働く人が常に入れ替わっていくため、年々業務を拡大したり、仕事の質を仕上げることも難しくなります。

これに対して、教育委員会も事業所の一つという面に着目し、職員の行っている業務の中から定型的な業務を切り出して障害のあるスタッフに担ってもらうことで、職員の負担が軽減され職場全体の作業効率も向上するという、職員の「働き方改革」に資する障害者雇用もあります。この場合には、教育委員会で働くこと自体が一般就労であり、一定期間で職員を入れ替えるようなことはせず、スタッフのスキルや習熟度を高めて生産性を上げることが目指されます。

どちらのタイプの障害者雇用を目指すかは、教育委員会として判断すべきことですが、いずれのタイプの場合でも、片手間な指導体制では十分な効果は期待し難いと言えます。「一般就労に向けて期間限定で訓練するチャレンジ雇用タイプ」であれば、個々のスタッフごとに一般就労に向けた個別の指導計画を策定し、効果的な指導を行う必要があります。一方で「働き方改革に資する期間制限のない安定雇用タイプ」であれば、業務の切り出しやスタッフへの仕事の割り振りなどの調整を行うジョブコーチの存在が効果的でしょう。

以下に紹介する都道府県教育委員会の障害者雇用事例からは、こうした取り組みのヒントを見出すことができますので、参考にされてはどうでしょうか。

(資料)都道府県教育委員会の障害者雇用事例

 

 

 

 

厚生労働省の労働政策審議会は、障害者雇用分科会からの報告を受け、令和4年6月17日に厚生労働大臣に対し「今後の障害者雇用施策の充実強化について」意見書を提出しました。意見書では、雇用義務の対象となっていない週所定労働時間10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者の就労機会の拡大のため、これらの障害者を事業主が雇用した場合に、特例的な扱いとして、実雇用率において算定できるようにすることなどが盛り込まれていますが、医療機関の障害者雇用に直接影響する「除外率」の見直しについても触れられています。

現在、医療機関の障害者雇用率を計算する際には、常用労働者数から30%を控除できる「除外率」の特例が経過措置的に適用されていますが、この「除外率」を30%から20%に10ポイント引き下げるというものです。

除外率の引き下げに伴い、法定雇用率を満たすために必要な雇用障害者数は増加することになります。厚生労働省では意見書の内容を踏まえ、障害者雇用制度の見直しを行う予定です。除外率の引き下げ時期については、若干の猶予期間が設けられる可能性はありますが、現在は法定雇用率を満たしている医療機関でも、不足数が生じることになるため、そのことも念頭に早目の対応をお勧めします。

(資料)

労働政策審議会障害者雇用分科会意見書(概要)[PDF形式:615KB]

労働政策審議会障害者雇用分科会意見書[PDF形式:511KB]

障害者雇用の現場では、障害のあるスタッフが作業しやすいように、ジグ(jig)という補助具が使われることがあります。ジグというのは、もともと製造業などで加工や組み立て作業を行う際に、部品や工具を正しい位置に置くのを助けるもので、現場の作業員が工夫して様々なジグが考案されています。

障害の特性として、均等な長さに切ったり、端を揃えて折ったり、決まった位置にシールを貼ったりするのが苦手な人もいますが、こうした人もジグを使うことで、仕事が正確にできるようになります。

都内にある公的病院では、複数の書類をセットする作業を行う際に、書類の端が不揃いになってしまうスタッフがいたので、ジグとしてクリアファイルの中に書類を入れてセットする方法を指導しました。クリアファイルの中で書類はきれいに揃えられましたが、クリップ留めするためにクリアファイルから取り出す際に、再び書類が不揃いになってしまいました。どうしたら良いか話し合う中で、障害のあるスタッフから、クリアファイルの隅を切り取れば、クリアファイルに入れたまま書類をクリップ留めできるのではないかと提案がありました。この提案で改良されたジグにより、作業の正確性とスピードが向上したそうです。障害のあるスタッフが利用者の視点でジグの改良に参加し、生産性の向上に貢献した好事例と言えるでしょう。

令和元年度から東京と大阪で開催されている「国の機関の職員に対する障害者の職場適応支援者養成セミナー」ですが、4年目となる令和4年度は以下の開催が予定されています。問合わせと申込先は、東京会場は特定非営利活動法人ジョブコーチ・ネットワーク、大阪会場は特定非営利活動法人全国就業支援ネットワークとなります。

【東京会場】

第1回

期間:令和4年7月11日(月)〜14日(木) 会場:AP市ヶ谷

第2回

期間:令和5年1月9日(月)〜12日(木)   会場:AP市ヶ谷

【大阪会場】

第1回

期間:令和4年7月20日(水)〜27日(水) 会場:ドーンセンター

第2回

期間:令和4年11月24日(木)〜